科学技術情報基盤構築における国立国会図書館の役割

ブログ更新が滞っている間に、仙台も梅雨入りしました。
厭だなと思いつつも、こうやって、毎年、同じように季節が巡ること自体が有り難いことなのですよね。

さて、ご縁があって国立国会図書館の科学技術情報基盤構築に関する委員会に関係しているのですが、そもそも、本ブログ読者諸兄で、どの程度ご存じかと思いまして、本日のエントリーを立てました。



国立国会図書館は、国会議事堂の隣にあります。
我が国唯一の国立図書館として、納本制度に基づき、国民から出版物を納入していただき、それらを中心に蔵書を構築していることは知られているかと思います。
大学院生の折に「博士論文は国会図書館に納本される」と聞いて、ほー、と思った記憶があります。
実は、リアル本だけではなくて、かなりの書籍等を、科学技術関係含めてデジタル化してアーカイブしています。

何よりカッコイイのはその理念です。
ちょっと引用しておきましょう。
「真理がわれらを自由にする」

 この言葉は、国立国会図書館法の前文「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。」の一部です。国立国会図書館の設立理念ともいうべきもので、東京本館の目録ホールに、日本国憲法制定時の憲法担当国務大臣でもあった初代館長金森徳次郎の筆跡で刻まれています。

 国立国会図書館法案が議決された昭和23年2月4日の衆・参両議院本会議での説明を見ると、「国立国会図書館は、知識の泉、立法のブレーンになる。あらゆる材料をここに集め…文化の促進をはかり、産業の高揚をはかる仕組である」(中村嘉寿衆議院図書館運営委員長)、「従来の政治が真理に基づかなかった結果悲惨な状況に至った。日本国憲法の下で国会が国民の安全と幸福のため任務を果たしていくためには調査機関を完備しなければならない」(羽仁五郎参議院図書館運営委員長)という趣旨のことが述べられています。

 むろん、民主主義は、ひとり国会議員が情報を持つことにより実現するわけではありません。国民が情報を持つこともまた民主主義の不可欠の要素です。このため、国立国会図書館は、「真理がわれらを自由にする」の理念の下、国会に奉仕するとともに、国民の情報ニーズにも応える機関として位置づけられています。

 なお、この言葉は、法案の起草に参画した羽仁議員がドイツ留学中に見た大学の銘文に由来し、その銘文は、新約聖書の「真理はあなたたちを自由にする」(Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕΙ ΥΜΑΣ ヘー アレーテイア エレウテローセイ ヒュマース ヨハネによる福音書8:32)に由来するといわれています。

参考文献:稲村徹元・高木浩子 「「真理がわれらを自由にする」文献考」『参考書誌研究』35号 1989年2月 P1~7


現館長の長尾真先生は「知識インフラ構築」のために国立国会図書館が果たす役割についてメッセージを発しています。
館長挨拶「知がわれらを豊かにする」
一番大事だと思う箇所を引用します。
 日本は今日まで科学技術を基盤として、皆が営々と努力し、進歩発展という概念に支えられて進んで参りました。しかし21世紀に入って振り返ってみますと、豊かな文明を築いてきた一方で、地球環境問題、食糧・資源・エネルギー問題、人口問題など、多くの深刻な問題を引き起こして来ているのに気づきます。したがって、これからの40年間にこういった深刻な問題を解決するとともに、実現すべき真の豊かさとは何かを真剣に追求してゆかねばなりません。そしてそういった世界を実現するために、日本が世界のために何が出来るかについて考えねばなりません。

 私は、最も大切なことは、日本の文化、日本人の心の本質といったもの(すなわち、日本の知、知識)を我々がより良く自覚することであると考えます。そしてその価値が世界に広く認識されるよう努力することによって、持続可能で平和な地球、心豊かな社会の実現に貢献できるものと考えます。なぜなら、専門的知識は技術を創造し、社会経済を発展させますが、広い豊かな知識はより良い文化を創り出し、人々の心を豊かにし、平和な社会を実現するための原動力となるものだからであります。


*****
明日は、いよいよ押し迫ってきた第4期科学技術基本計画策定のための総合科学技術会議専門調査会です。
by osumi1128 | 2010-06-16 01:44 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31