『病気になりやすい「性格」』(辻一郎著、朝日新書)
2010年 07月 02日
梅雨の晴れ間の陽射しは真夏を感じる仙台です。
夏至の頃の今が一番、陽射しが強くて、8月ともなれば秋の気配を感じるのは、東京エリアで育った身には、ちと寂しくもありますが、ヨーロッパ的ですね。
さて、本日は著者よりご恵贈頂いた『病気になりやすい「性格」 5万人調査からの報告』(辻一郎著、朝日新書)の感想を。
辻先生は東北大学大学院医学系研究科の公衆衛生学の教授です。
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うちの医学部は伝統的に社会医学が強いのですが、辻先生の前任の教授で、医学部長を長く務められた久道茂先生の頃から、5万人もの大規模な前向き(コホート)調査研究を展開し、多数の論文発表が為されています。
本書では、このようなご自身の研究実績や、その他の疫学研究論文のデータに基づいて、「病気になりやすい性格」について考察されています。
ここでの性格の分類は、ドイツのアイゼンクという学者の見解に概ね基づいています。
アイゼンクは「情緒が安定しているか、不安定化、と外向的か内向的か」の2つの軸をもとにして、ギリシア時代にガレヌスが提唱した4つの性格「憂うつ質、胆汁質、多血質、粘液質」に対応させました。
つまり、外向的で情緒不安定な者は胆汁質(気難しい)、外向的で情緒安定している者は多血質(楽天的)、内向的で情緒安定している者は粘液質(鈍重)、内向的で情緒不安定な者は黒胆汁(憂うつ質)のように分類したのです。
(註:もちろん、このような性格はスペクトラム的であり、詳しくは本文を参照のこと)
さてオビから抜粋すると、病気と性格の関係は以下のようになります。
肥満:
外向的性格の人。
さらにストレスで太る。
肥満は伝染する。
がん:
性格との明らかな関係はない。
心筋梗塞:
出世意欲や競争心が強く、せっかちな人
認知症:
中年期に無口でがんこ、非社交的。
逆に、次のような性格が百寿者になれる、として挙げてあります(オビより)。
男性:
開放性
新しいことを受け入れる性向。
知的な好奇心が強く、芸術を好み、創造性に富んで、環境の変化にも適応しやすい。
女性:
開放性に加えて外向性
社交的・活動的で派手好き
誠実性
几帳面で意志が強く、自らを律する傾向
これは、単なる相関性というよりも、前向き研究の成果により、因果関係があることが示されている点において、いわゆる血液型占いのレベルではなく、実証科学の範疇に入るものです。
また、本書の最後では「性格は変えにくいが、生活習慣や人生観を変えることで、健康で長生きをしよう」と謳っています。
なるほど、と思う方も、「えーっ、本当なの?」と疑う方も、是非、詳しいデータ満載の本書の中身を読んでみて下さい。