研究者のアウトリーチ活動を考える(その4):タダで行ってばかりでいいの?(追記あり)
2010年 11月 04日

昨年の政権交代を受け、本年6月19日付けで科学技術政策担当大臣および総合科学技術会議有識者議員の名前において「〈国民との科学・技術対話〉の推進について(基本的取組方針)」が提出されたことを受け、検討会が発足し、その委員を仰せつかっている。
本検討会は、「科学技術と社会との対話(研究者のアウトリーチ)」に関する問題意識を、行政・科学技術コミュニティ・市民・産業界が共有し、望ましい方向を模索し、これらの成果を政策等のあり方などに反映させることを目標としています。
私の立ち位置としては、
3,000万円以上の公的研究資金を獲得した研究者に国民との科学・技術対話(アウトリーチ活動)を義務づける
なんて乱暴なことにならないように議論の行く末を見守るつもりなのだけど、この際なので、各種アウトリーチ活動について取り上げている。
今回は、告知も兼ねて、東北大学脳科学グローバルCOEが行っている「脳カフェ」について取り上げ、ちょっと品がないかもしれないけど、コスト計算をしてみたい。
【第6回脳カフェ(12/4)のお知らせ】
詳細はこちら
そもそも「脳カフェ」って何?ということだが、これは「サイエンスカフェ」の脳科学版。
「サイエンスカフェって何?」という方には、まずこちらをお読み頂こう。
東北大学サイエンスカフェ
東北大学がサイエンスカフェを主催するようになったのは、今から8年ほど前になるだろうか。
理学研究科の先生方の有志が、大学院生のファシリテーター(対話や議論を誘導する役目の人)とともに立ち上げた。
現在では、大学本部のバックアップや、地元紙やローカルなケーブルテレビ局とも連携して、地域に根ざした活動を展開している。
先日取り上げたCREST市民公開シンポジウムは、数百人規模の聴衆に対して、10名程度の研究者が30分程度の講演を順次行っていくスタイルであるのに対し、いわゆる「サイエンスカフェ」は、小規模で、なるべく双方向のコミュニケーションを重視したスタイル。
「カフェ」という名が付くように、コーヒー等の飲み物が付く形式が多い。
東北大学サイエンスカフェや、脳科学グローバルCOEが主催する「脳カフェ」は、スタンダードなサイエンスカフェよりは大規模なもの(だいたい100名越え)となっている。
来月12月4日に行う脳カフェは東北大学サイエンスカフェも兼ねているイベント。
さて、現在、東北大学サイエンスカフェも脳カフェも、参加費無料。
東北大学サイエンスカフェの場合には、缶コーヒー等が大学の費用で提供されており、脳カフェの場合には、財団法人しんゆう会さんのご支援により、タリーズのコーヒーが先着250名まで無料で配られる。
講師の謝金は、学内講師は完璧なボランティア、学外の方は拘束時間と準備に費やされた時間を想定して、通常の学内規定に基づく単価計算により支払われる。
(したがって、1本数十万かかる…なんて方をお呼びする訳にはいかない。)
大学のサイエンスカフェのファシリテーターの場合には、拘束時間のアルバイト代を学内規定に基づいて払い、脳カフェは「教育的アウトリーチ活動」であるので、すでにRA経費として含まれている。
(関連して、例えば学術振興会の特別研究員にアウトリーチ活動が奨励されているが、謝金を受け取ってはいけないこととなっている。)
会場費としては、仙台市が所有する「せんだいメディアテーク」の1階ロビー部分を借り切ることと、音響関係や設営関係の業者さんに入ってもらっている。
自分が関わった「サイエンスカフェ」では、一番最初が学術会議主催のサイエンスカフェ@三省堂。
聴衆動員最長不倒が瀬名秀明さんとのトーク@メディアテーク(確か、400名超え)。
アート系では、学術会議と脳科学GCOEの共催で「能楽と脳科学と」というサイエンスカフェを、文科省の情報広場で行ったときには、講師の能楽師八田さんが、能面や能装束を展示して下さったり、1曲舞って下さった。
最近では、脳カフェ「脳はなぜ、美に魅せられるか」で、神経美学がご専門の認知科学者川畑さんと、雑誌の美術編集等に関わるエディトリアルコーディネーター鈴木さんを講師として迎え、自分でUstream配信も行ってみた。
今後は「食」関係とのコラボなんて企画も立ててみたい。
さて、(繰り返すが)現在参加者からは参加費を徴収していない。
ここ数年、サイエンスカフェや脳カフェに関わってきて、最近思うことは「本当にタダでいいの?」
先日、朝日カルチャーセンターというところで90分程度の講演を聴いたが、ここでは2000円〜4000円程度の受講料を取る。
講演料がどのようになっているかは正確には知らないが、カルチャーセンターの運営にかかる分の方がずっと多い(つまり、講演料が高い訳ではない)らしい。
「大学が主催するイベントなのだから、タダであるべき」というのは、本当のところどうなのだろう?
いわゆる国立大学は学生さんの(あるいはその親御さんの)払う授業料等と、国からの運営費交付金で基本的には運営されている。
大学のCSRはもちろん必要だが、運営費交付金削減が取り沙汰されている現在、このようなイベントを毎回毎回「タダ」で提供することは、本当に大学のステークホルダーに対して誠実な行為なのだろうか?
例えば、大学がそういうアウトリーチ活動を専門に行う部署をNPOとして独立させ、その維持運営(人件費含む)に関わる費用を捻出できるくらいの分を想定して、参加費を取っても良いのではないか?
国立の美術館・博物館だって、1000円〜2000円程度の観覧料を徴収している。
「そうしたらサイエンスカフェの参加者が少なくなるでしょう」
それならそれで大いに結構なことと思う。
「タダ」だと主催する側にも甘えが出るし、参加費を払う方は、より厳しい目で見るだろうから、結果として、そういう科学コミュニケーションイベントの質は向上することが期待される。
(あるいは、案外、人の心理としては「タダのモノの方が価値が低く感じる」ということもありえるかも。「こんなに高いワインだから美味しいはず」ww)
別に、すべてのイベントで参加費を徴収すべしと提案している訳ではない。
ただ、「研究者のアウトリーチ活動を盛んにしましょう」というお題目は、企画運営する人々の時間を使うだけでなく、実はそれなりに「コストがかかる」ということを忘れてはいけない、ということを伝えたかった次第。
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ちなみに、上記で取り上げたのは、大学等が主体となる「科学イベント」としてのアウトリーチ活動である。
研究を専門としない方々が楽しみながら行うという形式の小規模な、いわば「本来の」サイエンスカフェは日本全国に広まりつつあり、サイエンスポータルというサイトには充実した情報が提供されている。














