研究者のアウトリーチ活動について考える(その7):東北大学広報の事例【改訂・追記】

今週金曜日からの北米神経科学学会にはラボから8名参加、というこれまでにない大人数。
今日はポスター確認のラッシュ……。

さて、研究者のアウトリーチ活動について、ここしばらく、いろいろな事例を紹介している。
研究者一人一人が市民に対して開かれた心を持ち、研究の成果だけでなく、その面白さや、あるいは苦労話なども伝えられたらいいなと思っているのだけど、実際に、個々の研究者それぞれが市民公開講座やサイエンスカフェや出前授業をするのには、種々のバックアップが必要である。
そういう支援体制は、大学・研究所等の研究機関、研究費配分機関、学協会、地域の科学館等に置かれるべきと考える。
もちろん、市民サイドに立ち上がるNPOや「有志」の存在も大切であるし、学生さんがサークルを作るのもいいだろう。
本日は、東北大学が主体として行っている大学広報の事例を紹介したい。




大学広報(含むアウトリーチ)としては、国内向けと国際広報とあるが、ここでは国内向けのみ。
(国際広報は現時点において国際交流課扱い)
広報対象者としては、①高校生、高校教員、②一般市民(小・中学生・保護者含む)・地域住民、③他大学・企業等、④同窓生等を想定している。
入試センター扱いの中にも「出前授業」が入っていることに注意。
一応、研究者のアウトリーチではない「コンサート」なども関連するので記しておく。

〈入試センターを介して行っているもの〉
・入試センターHP
・高等学校への冊子(大学案内、入学者選抜要項及び募集要項)の配布
・オープンキャンパス(各部局による実施も大々的)
・入試説明会(高校教員対象)
・進学説明会(高校生対象)
・業者主催進路相談会への参加
・出前授業(講師派遣)
・高校訪問
・大学見学(中学生対象もあり)

〈広報課を介して行っているもの〉
全学HP
・プレスリリース
メールマガジン(同窓生向け)
・まなびの杜(市民向け広報誌)
アニュアルレビュー
サイエンスカフェ
リベラルアーツサロン
・公開講座
・東日本放送「東北大学の新世紀」シリーズ(研究者・研究成果紹介)
・広報展示スペース(史料館、萩ホール、エクステンション教育研究棟)
・萩ホールでの主催コンサート
・メディアによる広告(進研ゼミ「マイビジョン」への広告、HP「マナビジョン」への掲載、キャンパスチャンネルにより予備校に動画の発信、九州において約400箇所による動画の配信)
・イノベーションフェア
・国際産学連携シンポジウム
・東北大学研究シーズ集
・ホームカミングデー
・萩友会会報
・交流会(関東・関西・九州)
・萩友会プレミアム会員懇談会
・各支部同窓会への参加
・今後、YouTubeの大学サイト構築予定

〈その他〉
科学者の卵(高校生向け特別プログラム、生命、理学、農学、工学、高等教育開発が運営部局)


上記にはもちろん、それぞれ教員(=研究者)が巻き込まれている訳で、改めてものすごく仕事が多いことを感じて、くらくらしてきた……(溜息)。
東北大学の規模(教員数3000人弱、事務職員・技術員3000人弱)でこれだけのことをやっているが、残念ながら今のところ東北大学の全学広報課には(東大、阪大と異なり)科学コミュニケーションを専門とする人材を抱えてはいない。
現在、我々は広報戦略としてコストパフォーマンス等も見直したり、積極広報としてどのように取り組むべきかなど悩ましい議論しているところではあるが、おそらく小さな組織では同じだけのことをするのは難しいだろう。

「年間3000万円以上の研究費を獲得したら〈市民との対話〉をしなさい」というのは、言い易く行い難し、なのである。
by osumi1128 | 2010-11-09 00:42 | 科学技術政策

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