マイクロソフトのソフトウエアほか

午前中に1つ論文受理の知らせが届き、相変わらずの梅雨景色なるも、気分は爽快。

大学院生が筆頭著者の論文で、いろいろ紆余曲折もあって時間がかかったが、これで学位取得の条件の1つをクリアーできた。
一番喜んでいるのは本人だと思うが、私としてもやっぱり嬉しい。
ということで今夜は(セミナーに客人も呼んでいるし)祝杯!の予定。

さて、数学科の友人は彼女の知り合いがProsper+TeXで作成したものをPDF化して送ってきてくれた。
PDF化されたファイルをAdobe Readerの全画面表示にすると、ちゃんとアニメーションされる。
必要があってさまざまな分野のプレゼンスライドを見る機会があるが、最初から最後まで内容がほとんどわからないというものを初めて見た気がする。
(専門家向けの長目のセミナーのもののようだった)
確かにこのくらい数式が多いと、特殊なソフト(TeX)が必要であることがよく分かる。

そういえば以前、東大の情報系の友人も同じようなやり方でプレゼンしていた。
彼女曰く「最近、文部科学省などの申請書類がMicrosoftのフォーマットになっているけど、あれは絶対におかしい!」
つまり、官公庁が商業ソフトの使用を推奨しているのは、特定の企業の営利につながるので止めるべきということ。

例えばMicrosoftのWordというのは、非常に使いにくいソフトであるが、WindowsでもMacでもそこそこ互換性があるので(フォントの問題などもあり、ずれたりすることもしばしばだが)、とにかくユーザーが多い。
ExcelにしろPowerPointにしろすべて同様の数の原理。
でも、やっぱりWordには一番問題があると思う。
バグのあるソフトでも皆文句言わずに使うから、開発担当者は本当に手を抜いている。
罫線が絡んだりすると、訳分からない挙動を示す。

そもそも、日本の様々な書類は「枠に入れる」ということを伝統としている。
「原稿用紙のマス目」や「下線」や「外枠」などなど。
きっとこれはかなり日本人の思考性を規定しているのではないかと感じる。
研究費の申請書など、枠がある必要はさらさらないはずなのだが、手書き時代に「形式を整える」という目的を「枠にはめる」というやり方で解決してきたために、ワープロ時代になってもまだその悪習を引きずっているのだ。
欧米は100年以上前からタイプライターが普及し(最初のタイプライターは1714年に遡るという)、タイピングで書式を整えるスタイルが踏襲されてきたので、枠などはつけない。
(高校に上がる前の春休みにタイプライターの学校に通ったことがあるが、実に巧妙な「センタリング」や「枠を引く」などの独特の技があったことを覚えている)
論文の原稿だけでなく、グラント申請書も原則枠無し。
(中曽根時代に日本が出資して設立されたHuman Frontier Science Programの書類には枠があった!)
せっかく日本語もワープロで書ける時代になったのだから、枠無しでもよいではないか?

関連して、日本における英語教育では「タイピングの基本」を教えていない。
したがって、大学院生が初めて英語の抄録やら論文やらを書く段になって、「カンマの後には1スペース空けます。ピリオドは省略形の場合には1スペース、文末は原則として(タイプライター時代は必ず)2スペース空けます。段落の最初は「タブキー」で下げます。原稿を直すことが多い場合にはダブルスペースに、そうでないなら1.5行空けが良いでしょう」などを、毎度毎度言うことになる。
先輩の原稿などを渡しているのだから同じように真似すれば良さそうなものなのに、誰もそういう細かいところまでは気が付かない(観察力の問題?)。
いつも「こういう注意は私がすべきことなのか?」と悩むが、悩んでいては進まない。
よって、渡された最初の原稿は真っ赤になって学生の手元に戻ることになる。

結論。
研究者が研究そのものに使う時間を少しでも多くするためには、1) Wordに替わる良いフリーソフトを普及させること、2) 申請書類の枠を撤廃すること、3) せめて大学教養科目としてタイピングの基礎を教えること、が必要である。
Commented by calypso at 2005-07-13 00:32 x
数学科の友人です.

フッフッフッ, 大隈先生, あなたはTeXを使うべきです.
ピリオドやカンマの後のスペーシング. そんな事,著者が気にする必要はありません. TeXが自動的に調整してくれるからです. 数式は勝手にセンタリング,定理は(英語のときは)勝手にイタリックに直してくれます. 全く常識のない初心者でも, TeXで書けば,業界の常識にピッタリあった論文を書くことができるのです. しかも,カスタマイズしたければ,いつでも要望に応えてくれるし.とっても有能で,従順な秘書のようです.

しかも,OSを選びません.テキスト形式なので,WindowsだろうがMacだろうが Unixだろうがお構いなしなのです.

どうですか? 使いたくなってきたでしょう?
Commented by osumi1128 at 2005-07-13 21:23
そうですね・・・
でも、ボタンを探す方が慣れているのですが・・・
うーーーん。うーーーーーん。
どなたか援護射撃して頂けません?
Commented by ryasuda at 2005-07-16 01:05 x
私も物理出身ですから、texが好きだったんですけどねー、前のボスにやめさせられました。共同執筆のときに、相手がtexを使えなければならない、というのが欠点ですかね。生物系ではtexを使わない人が多いですからね。Wordが論文を書くときに使いにくいのはwordの問題じゃなくて一般用のワードプロセッサーというのものが科学論文を書くためにoptimizeされているわけではない、ということでしょうかね。
by osumi1128 | 2005-07-12 14:25 | Comments(3)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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