ゼキ先生X宮島先生「脳科学と芸術の対話」【さらに加筆】
2011年 01月 21日

21日〜23日に東北大学脳科学国際シンポジウムがあり、絶賛学位審査ファイナルステージに加えてゲストの対応等、ブログ更新が滞りましたm(__)m
アカデミックにもアート的にも刺激的な3日間だったので、書きたいことは多々あるのですが、とにかく順番に。
まずは、東北大学脳科学国際シンポジウム初日の夕方に並行して行った市民向けイベント、ゼキ先生X宮島先生「脳科学と芸術の対話」についてのレポートを。
(ポスター、チラシ、釣り看板等のデザインは東北芸工大近藤研出身の古川哲哉さん)
主催者であるグローバルCOEのウェブサイトにレポートが載りましたので、どうぞ。
こちら
セミール・ゼキ先生はユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の教授で、研究としては視覚認知科学、神経美学がご専門。
日本経済新聞社から『脳は美をいかに感じるのか』という一般向けの著書も翻訳されています。
今回、UCLと東北大学の連携により開催した国際シンポジウムに招聘されたので、それなら是非、アートが盛り上がりつつある仙台において市民向けにも御登壇頂きたいということを御願いしました。
また、同時通訳の必要性から、お一人だけのご講演は少しヘビーになるのではと考え、東北芸術工科大学副学長で現代美術作家の宮島達男先生にも、対談のお相手になって頂くという企画を立てました。
会場は諸事情により、やや古い設備の市民会館とならざるを得なかったので、「ちょっと寂しいよね。なんとかならない?」という私の無茶振りが功を奏して(?)、家具等のデザインをされている尾形欣一氏からソファやテーブル等の什器をお借りすることができました。
「平日金曜日の夕方、しかも1月末なんて一番寒いし、人、集まるかな?」という心配をよそに、250名の定員に対して300名ほどの応募がありました。
これらは、主催者である東北大学脳科学グローバルCOEのHPでの告知とポスター、チラシを基本としつつ、河北新報さん、仙台闊歩さん、といったメディアに加え、東北芸工大HP、以前、脳カフェにお呼びした元ブルータス編集長の鈴木芳雄氏のブログ、拙ブログ等のウェブサイト、そして、宮島先生がなさったTwitterでの連続ツイート(仙台通信にまとめ1、まとめ2)、@fukuhen鈴木氏や仙台クリエイティブコンソーシアムさん@creative_sendai のリツイート、その他、それぞれのフォロワーさん達等のネットコミュニケーションが相まっての集客だったと思います。
つまり、そんなにお金をかけなくても、それなりに人を集める手段はあるということ。
ゼキ先生のお話は、色を認知する脳の部位と、動きを認知する部分は違う、という導入から始まったのですが(ここの動画が動かなかったのが、返す返すも残念)、奥行きなどを表すのにどうしたらよいか、キュビズムの例、線の特定の傾きや動きに反応する脳細胞があること、キネティックアートとの関係、二義性のある絵(若い女性か魔法使いのようなお婆さんか、人の顔と花瓶等)、フェルメールのような「曖昧さ」のある絵の魅力など、より難易度の高い話につながって行きました。
さらに、デュシャンのような現代アートはどのように脳に働きかけているのかについては、まだ謎が多い訳ですが、例えば脳の活動のイメージング技術等を駆使することにより、「美」そのものを認知するのに中心となっている脳の部位があるのではないか、というような最新の研究成果についても紹介されました。
最後のTaking home messageとしては、アートは、作家、作品、鑑賞者の3者によって成り立つ、ということで締めくくられていました。
(これはまさに、宮島先生の「art in you」の思想にも繋がりますね)
休憩時には宮島さんの最新LEDディジタルカウンター作品を映像で流しつつ、その後、お二人に対談をして頂き、モデレータとして横で少し補足したのですが、宮島さんは事前にゼキ先生の御著書も完読され「生徒として質問させて頂きます」ということで、「美しいアートを見ると脳の中でドパミンが出るのでしょうか?」というような直球あり、「意は似せ易く、姿は似せ難し」という本居宣長の言葉へのコメントを逆に求められたり、また、ゼキ先生が宮島先生に「作品が完成する瞬間とは?」というような質問を投げかけたり、こちらが期待した以上に噛み合った展開になりました。
画像はただ今整理中なので(自分は司会等を行っていて撮る暇が無く……)、追ってまたアップ予定です。
皆様、お忙しい中のご来場、誠に有難うございました。
また、会をご支援、運営頂いた関係の方々に心から御礼申し上げます。

(鈴木芳雄氏撮影)
【関連リンク(追記)】
ゼキ先生の御著書:『脳は美をいかに感じるのかーピカソやモネが見た世界』(日本経済新聞社)
『芸術と脳科学の対話―バルテュスとゼキによる本質的なものの探求』(青土社)
(ちなみにこちらの対話では、宮島先生の場合と違って、ゼキ先生とバルテュスの話が、全然噛み合っていないのが面白いですww)
仙台クリエイティブクラスターコンソーシアム
尾形欣一氏のサイト
鈴木芳雄氏ブログ:シンポジウム「脳科学と芸術との対話」