Wordの使いにくさについて
2005年 07月 16日
といっても気温が26度くらいのことなので、東京以西よりははるかにまし。
数学科の友人は私にTeXを使うように勧めているのだが、心理的抵抗は大きい。
コメントで援護射撃をお願いしたら、以下のようなコメントが返ってきた。
<ryasudaさんのコメントを引用>
私も物理出身ですから、texが好きだったんですけどねー、前のボスにやめさせられました。共同執筆のときに、相手がtexを使えなければならない、というのが欠点ですかね。生物系ではtexを使わない人が多いですからね。Wordが論文を書くときに使いにくいのはwordの問題じゃなくて一般用のワードプロセッサーというのものが科学論文を書くためにoptimizeされているわけではない、ということでしょうかね。
<引用終わり>
他の分野の原稿スタイルはよく知らないが、バイオ系の英文原稿のスタイルでは、A4(もしくはレターサイズ)に横書き、行間は昔はダブルスペースだが、今は1.5行程度、本文(謝辞、付図説明、引用文献まで含む)の後にTable、次に図、となっている。
論文の印刷スタイルでは、本文の中に図や付図説明が配置されるのだが、原稿の段階ではバラバラになっている。
(これはこれで、ざっと要旨と図だけ見てreviewersに回すかどうか判断するには便利である。)
現在ではどんなスタイルでも原稿を作ることが可能だから(例えば、廃れてしまったPageMakerや、まだ試していないPagesなどを使って)、最初からビジュアルな原稿で投稿することだって本来は可能なはずだ。
(ちなみに、先日投稿した雑誌では、オンライン投稿の段階で図に付図説明を付属させることが可能なスタイルになっていた)
でも、図のレイアウトなどを考えるというのは、科学者がしなければならないことではないように思う。
たぶん、数学であれば、論理を構築するのが数式そのものだから、本文の中に、それが必要な順序で示されることが絶対条件なのだろう。
数式自体はビジュアルに理解されるということもあるのだろうが、バイオ系の論理構築に必要な「図・表」は、「数式」のように本文そのものの中に置かれるには無理があるように思う。
つまり、視線は言語で書かれた本文と、図表の間を行ったり来たりする。
だから、本文とは別立ての図表というのは、ある意味自然なスタイルだ。
さてでは、「本文」を作成するソフトの必要条件は何だろう?
「copy & paste」機能は言うまでもない。
適当な行間の指定は必要だが、Publishingではないので厳密である必要はない。
タブキーは(使うかどうかは別にして)あった方がよいが、右端揃えもなくて構わない。
フォントは最低限の読みやすいものがあれば十分で、サイズも10, 11, 12, 14くらいまであれば事足りる。
たぶん一番有り難いものは「スペルチェック」機能だろう。
これこそが「タイプライター」から「パーソナルなコンピュータ」への進化の賜物だ。
思うに、10年ほど前のかつての英語版のWordはこういう最低限の機能を満たしてくれていて、それで本当に十分だった。
ところが、日本語での文章作成も可能なWordが開発された段階で、何か違った方向に進化していった気がする。
「日本語の文法チェック」機能はよけいなお世話だし(文脈依存的な漢字変換までできたら凄いが、これは別のソフトの機能)、訳分からない挙動を示す「勝手な箇条書き」がデフォルトなのは、おせっかいを超えていらいらさせられる。
他の文章からコピペすると勝手にフォントまで変わるのは何故なのだろう?
いちいちそういうことに苛立ちながらWordを使っているのは、精神衛生上良くないばかりでなく、少しずつ無駄なエネルギーを使っていることになる。
日本人というのは相当我慢強い集団なのかもしれない。
使いにくいWordを黙って使い続けて、出張の書類にいくつもの判子を押して、枠の中に文章だけでなく人間性も押し込めている。
あるいは、枠の中に安住する「そこそこ平和」な生活が一番大切だと思っているのだろうか?