広い視野に立つこと【リンクupdate貼り直し】
2011年 03月 20日
余震は今日も続いていることからも、いかに大きな地震であったかを毎日感じている。
「あぁ、震度3、大したことないね」と思う一方、揺れに敏感な「地震酔い」の状態になっていて、普通にしていても船に乗ったような感覚がある。
無事にといえば無事に過ごせたが、想定外のこととして生じた福島原発トラブルの状況は予断を許さない。
この間、地震のお見舞いメールの後に、海外からは「原発が危ないからNoriko逃げておいで」というメッセージを多数から頂いた。
「原発のクールダウンが現状通りに進めば」仙台(80km圏内)は十分安全圏内であることを説明するが、大きな余震が原発基地付近で「起こらない」とは誰も言えない。
また、海水投下の結果として、塩分がバルブを詰まらせることにより、3号機で原子炉の入った格納容器の圧力が高まり、格納容器の圧力を下げる作業が開始されるが、これにより外部に放出される放射性物質が増えることになる。
NHKニュース(3月20日 17時48分):3号機、なお予断を許さず
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この数日、海外メディアの報道がややオーバー気味(私はそれでも、その方が良いと思っているが)であるのに対し、国内では、過去最大の死亡者数を日々更新する一方、「再会の喜び」的な報道も増え(それ自体は悪いことではない)、「あぁ、良かったね」というモードに入り、大きな問題を見過ごしているように思う。
以下、気になる点を指摘しておきたい。
1)今回の地震により東日本の石油製品の供給に大きなダメージがある
この点については、長期にわたって物流が悪くなることが予測される。
その結果として、東北地方の経済基盤が沈下する恐れがある。
場合によっては日本全体の問題ともなる。
2)福島原発が廃炉になることにより、首都圏の電力供給が低下する。
すでに「計画停電」もされているが、首都圏のライフスタイルそのものを考え直すべきである。
3時間ごとの計画停電は、非常に「平等」なやり方で、きわめて日本的であるが、大きな問題がある。
それは、病院や研究機関等、24時間安定した電源供給が必要なところでも、停電に備えなければいけない、つまり、かなりの頻度で非常電源に切り替えることを余儀なくされる。
コートを着つつ、地下鉄の中に冷房をかけるのはどうか?
フレックスな出勤時間(より前にシフトすべき)にできないか?
残業を減らせないか?
3)福島原発付近の放射物質汚染が生じる
この点に関しては私は専門家ではないが、放射線生物学的には、汚染物質が体内に取り込まれることにより、より若い世代における影響が大きく、発癌等に繋がることは広く知られている。
この他の点として一つ指摘しておきたいこととして、チェルノブイリの原発事故の後に、統合失調症の発症が増加したという疫学研究がある。
Schizophr Bull. 2000;26(4):751-73.
Schizophrenia spectrum disorders in persons exposed to ionizing radiation as a result of the Chernobyl accident.
Loganovsky KN, Loganovskaja TK.
World J Biol Psychiatry. 2005;6(4):212-30.
Whether ionizing radiation is a risk factor for schizophrenia spectrum disorders?
Loganovsky KN, Volovik SV, Manton KG, Bazyka DA, Flor-Henry P.
原発の 60 km圏には、郡山(人口 30 万人超)および福島(人口 30 万人弱)という、福島県の大都市二つが含まれているために、市民の移動は容易なことではない。
だからこそ「まだ安全なうちに」国が計画的に順次避難をさせるべきではないだろうか?
管総理のメッセージ(3/18)でも「日本の危機」と言っている。
求められるのは今、暖かい心とともに、時間的空間的に広い視野に立つことだ。
そして、それを考えるべきはとくに、今回、被災しなかった人々、被災程度の低い人々であろう。
ある意味、今回の大震災は、今後の日本がいかにサステナブルな環境に移行するかを熟慮しアクションするための契機である。