団まりな先生ご来訪:『渚の唄』ふたたび

金曜日、突然ご連絡頂いたのは、発生生物学者の団まりな先生。
「今、姉のところに来て仙台にいるのだけど、ちょっと顔見に行こうかと思って……」

まりな先生には学会関係でお世話になっていて、たぶん、ちょっと鼻っ柱の強いオンナノコだから、将来どうなるのかな?くらいに捉えられていたのだと思う。
数年前に早めに大阪市立大学をリタイアされて、館山で畑仕事をしながら悠々自適の生活と伺っていた。

うわ、お姉様が仙台だなんて……久しぶりだし、そういえば御著書を持っていたから、サインして頂こうかな、と思って、震災後に整理した本棚に手を伸ばし、『動物の系統と個体発生』(UPバイオロジー、東京大学出版会)を取り出したのだが、その隣に並んでいた『渚の唄 ある女性生物学者の生涯』(加藤恭子著、講談社)も手に取ってみた。
『渚の唄」で取り上げられているのは、まりな先生の母上にあたる團ジーン先生なのだ。




團ジーン先生にはお会いしたことは無いのだが、ご主人の團勝磨先生には発生生物学会でお目にかかったことがある。
当時、日本ではウニを用いた発生の研究が盛んであり、2会場同時進行のうち1会場が「ほぼ、ウニ」という時代がかつてあった。
団まりな先生ご来訪:『渚の唄』ふたたび_d0028322_1117933.jpg
『渚の唄』の帯を書いているのが團琢磨男爵の孫であり作曲家の團伊玖磨氏なのは、伊玖磨氏にとってジーン先生が叔母にあたるからなのだが、その文章を読み直してびっくりした。
抜けるような青空の下に、
根雪が眩しかった。僕が
生涯で最も尊敬した女性
ジーン叔母は、
仙台の葛ヶ岡墓苑に
眠っている。
美しく澄んだ
冷たい空気の中で、
僕は叔母の一生を憶った。
涙が果てしなく
頬を伝わった。


知らなかった!
團ジーン先生が(その後に亡くなられた勝磨先生とともに)仙台の葛岡墓苑に埋葬されていらしたなんて!!!
しかも、3月11日の朝、つまり大地震の起きる4時間ほど前、私はまさに研究室から車で20分ほどの葛岡墓苑にいて、医学部の解剖実習のために献体された方々の納骨式に参列していたのだった……。

今回の震災では、いろいろな巡り合わせを強く感じる。

まりな先生の『動物の系統と個体発生』もコンパクトにまとまった名著だし、『渚の唄』は「格式高い日本の旧家の嫁となり、戦中の異境で母として生きぬき、さらに科学者として国際的な業績を残したアメリカ人女性・團ジーン夫人(帯より)」についての伝記で、よく女性研究者の卵さんたちにお勧めしている。
どちらも絶版なのは残念。
連休にちょっと読み直してみよう。
by osumi1128 | 2011-04-24 11:19 | 雑感 | Comments(0)

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