CDBは日本の研究所らしくない

先週6月2日〜4日にかけて、Neurogenesis 2011という小規模な国際会議のオーガナイザーとして理化学研究所発生再生研究センター(CDB)を使わせて頂いた。
もともとAbcam社という抗体等のメーカーさんがサポートしている国際会議で、今年は松島で開催する予定が3月11日に震災となり、一旦は中止か、と思ったのだが、CDBの松崎さんが「良かったら会場使って」と仰り、Abcamさんも「いいですよ、やりましょう」ということだったので、「じゃぁ、16年前の阪神・淡路大震災からの復興の象徴の地、神戸開催」というのもシンボリックでいいだろう、と考えた。





国外からのゲストスピーカーには、やはり直接そうとは言わないけど、今日本に来たいモードではない、ということだと思う、辞退者が若干出たが、基調講演のArnold Kriegstein先生のトークは、オンラインリアルタイム中継の設備を使わせて頂いて無事に行った。
これは、今後、スピーカーの選択肢を広げるという意味でも重要なことだと考えている。
遠くから来るのも、その費用も大変だけど、ヴァーチャルな参加というのも、これからは有り、だろう。

CDBには何度も来ているが、自分が主催者側として会場を使ってみると、オーディトリウムやその周辺の使い勝手の良さがよく分かった。
会場から出たところにポスター会場や懇親会の会場になる空間があり、ここまでなら、まぁ、あるかもしれないけど、なんと水回りを備えたバーコーナーまで設置されているのだ。
したがって、休憩時間のコーヒーの準備なども実にスムーズ。
こういうものを「贅沢」と捉えるべきではない。
什器がいわゆる「事務机・椅子」的ではないのも、クリエイティブな空間を醸成している。
そう、サイエンスを行う場っていうのは、単調ではなくて、刺激に富んでいるべき。
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さらに言えば、CDBの設備はその他にも「日本離れ」している点が多々ある。
建物自体や研究設備そのものについてはここでは触れないが、その他で一番秀逸なのは、外来者用の展示室とアウトリーチ用の実験室だ。
CDBは日本の研究所らしくない_d0028322_2011895.jpg
種々のモデル動物を使った簡単な発生生物学実験を地元の高校生等相手に行う機会が、年に数回あるらしい。

こういうことが可能なのは、Public Communications担当の専任スタッフがいるからだ。
上に示した画像で、今回のゲスト相手に説明しているのはDouglus Sippさん。
彼はもちろん、webや冊子の英語版等にも大きく関わっているし、他にも(今回お目にかかれなかったけど)南波さんという方もいらしたはず。
その他、国際会議の運営やゲストとのやりとりを専門とするスタッフも数名いらっしゃるし(今回もお世話になりました)、なんでも教員がボランティア的に関わっている大学とは、やっぱり違うなぁ……。
まぁ、それでも、大学の楽しさというのはあって、海のものとも山のものともつかぬ訳わからない学生さん(学部生だって大学院生だって)と身近に接して生活し、研究活動を一緒にしていく間に、何か気がつくと化けていく、あれ、いっぱしのこと言うじゃない……なんていう姿を見るところか。
by osumi1128 | 2011-06-09 20:22 | 科学技術政策

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