ノーベル賞を取れる確率
2011年 06月 16日
1901年の報知新聞「20世紀の豫言」によれば「電信のみならず無線電話は世界諸国に連絡して、東京に在るものが倫敦、紐育にいる友人と自由に対話することを得べし」「電話口には対話者の肖像現出するの装置あるべし」という項目が挙げられているが、確かに20世紀の終わりまでにそんな時代になった訳だ。
時差はどうしようもないけど、ボストンの夕方6時は、日本の朝7時なので、それなりに対応できる。
さて、話は「誰それさんの論文はどうなったのですか?」という彼女の質問から端を発し、「ノーベル賞を得るのはどのくらい難しいのか」という方に転がった。
4月の頭に開催された第159回日本学術会議総会において、昨年ノーベル化学賞を受賞されたお一人の根岸英一先生が特別講演をされたのだが、そのお話の中に出て来たエピソード。
根岸先生によれば「ノーベル賞を取れる確率は1/100000000(10の7乗分の1)くらい」らしい。
1/100000000という数字は小さすぎて実感が無いけど、「1/10の幸運が連続で7回起きること」と言い換えられていた。
なるほど確かに「1/10くらいの幸運」は実感できるレベルだ。
そして、それが7回連続するというのは、一般人でも想像は可能。
ただし、そのような幸運が続くというのは、実際には本当に本当にレアなことなのだ。
1つ1つの1/10の中には、サイエンスのレベルだけでなく、健康面だったり、自分だけでなく家族の問題もあったり。
そういうさまざまな事柄が皆、上手くいって初めて大きなアチーブメントになる。
では9/10は無駄な営みかというと、そうではなく、1/10の幸運はその残りに支えられている。
一つ一つの研究には、それぞれ繋がりや歴史があるし、ノーベル賞級の発見があったとしても、それを見出したり評価したりする人もいなければ成り立たない。
そして、いつも発生学の講義で言うことだけど、生きて生まれてこれた、というだけでも、どれだけの幸運の積み重ねか。
発生のプログラムがちゃんと動いてくれたこそ。
そういう意味では、種々の病気だってあって当たり前、一病息災とも言うし。