クレー展@東京国立近代美術館を見に行った
2011年 06月 26日

クレーは好きな作家の一人なので、京都に引き続いて東京で開催されるのを楽しみにしていた。
震災以後、計画停電などが実施されるかどうかなど、一時はきっと関係者の方々は開催できるか気を揉まれたに違いない。
ロビーの照明は思いっきり暗かったけど、展示スペースは快適な温度湿度にコントロールされていた。
(きっと契約書の中の日本の梅雨から夏に持ち出すための貸出条件に入っているんじゃんないだろうか。)
今回改めてまず思ったのは、クレーは本当に多作な作家であったこと、常に工夫を続け、きっとそのプロセスを楽しんでいたのだろうということ。
そういう面を上手く伝える展覧会の構成になっていたと思う。
ずっと以前に抱いていたクレーの画風は「明るい色で構成された抽象画」だったのだけど、1月末の東北大学脳科学国際シンポジウムに招聘されたセミール・ゼキ先生にお話を伺った際、「クレーは〈色彩の画家〉として捉えられることが多いですが、フォルムを強調したものも多いですね。」と言われたので、そう思って観てみると、確かに線描画もいろいろあって面白かった。
しっかりした太い線のものも、非常に細密な細い線のものもあり。
展覧会では
プロセス1:写して/塗って/写して|油彩転写の作品
プロセス2:切って/回して/貼って|切断・再構成の作品
プロセス3:切って/分けて/貼って|切断・分離の作品
プロセス4:おもて/うら/おもて|両面の作品
という分類をして、いたが、この「プロセス1」ではまさに、フォルムが転写された後に、色が加えられる、という試みが為されていた。
(ちなみに、図録がそんな風に工夫されている)
ゼキ先生の専門である視覚認知科学的に言えば、「色」を認知するプロセスと「形(とくに線)」を認知するプロセスは、異なる神経回路によって担われているのだから、クレーがそのあたりを分離しようとしていたかもしれないのは興味深い。
何事も「プロセス」や「メイキング」に興味があるタチなので、クレーのアトリエの写真が多数展示されていたり、作品を創るのに使われた道具が観られたのも面白かった。
例によって展覧会を鑑賞しながら考える「もし下さるなら(笑)」の1点は、ゼキ先生がお好きだという「カイルアン 門の前で」よりも私は「襲われた場所」という、夕焼けのような色合いが美しい作品。
これは、クレーが「特別クラス」と名付けて最後まで手放さなかったものの一つ。
ちなみに、この謎解きは7月2日(土)に放映される「美の巨人達」(テレビ東京)で明かされます!
会期は7月31日まで。
是非ご覧あれ!
【参考リンク】
公式サイト:パウル・クレー おわらないアトリエ
フクヘン。:パウル・クレー展 —おわらないアトリエ
BRUTUS(2011年6/15号):Suprime Brutusのコーナーにゼキ先生に取材したクレー関係の記事を書かせて頂きました(p103-104)