幻指?

寝る前に小一時間本や雑誌を読むが、しばらく前から読んでいるのが一般向け神経科学の本としてロングセラーの『脳のなかの幽霊』だ。
(読み終わらないのは、ストーリー性の強い推理小説などと違って、どこから読み始めても構わないような展開だと、途中で他の本などに浮気してしまうからである。)
作者はアメリカの神経科学者、ラマチャンドラン博士(サイエンスライター、サンドラ・ブレイクスリーとの共著、山下篤子訳)。
1999年に初版が刊行されており、本当はもっと前に読むべき本であったのだが、なんとなく読み損ねた。
それには理由がある。

ラマチャンドラン博士はインドの生まれで、その名前を初めて聞いたのは、故梅園和彦さんからだった。
梅園さんのお声掛けで、「日印合同生命科学セミナー」というような会に出させて頂いたことがある。
気が付いたら今からちょうど10年前のことだ。
岡田節人先生、安田国雄先生ら、日本側が約10名で、南インドのマイソールというところでのセミナーだった。

初めてのインドだし、見るモノ聞くモノすべて興味深く、それはまたいつか話すとして、帰路の途中、マドラスでお土産を買うことになった。
なにせ物価が10倍くらい違うから、お大尽になった気分。
サリーの布から、タペストリーから、スカーフ、アクセサリーなどなど、色々買い込んでしまったのだが、さらにどうしても欲しいものがあった。
それは、60センチくらいの巾のある、比較的大きな木彫りの象の置物だ。
背中に象牙などを象嵌にした模様が付いていた。
かなり逡巡した挙げ句、やっぱり買わないと後悔すると思って、「これ、頂くわ」と言ってしまった。
もちろん、連れて帰るには大きすぎて別送にしたのだが、この買い物には皆びっくりしたようだ。

中でも梅園さんは喜んで「大きいねえ。名前は何にするの?」と聞くので、「うーん、まだ考えてないんだけど」というと、「ラマチャンドランってインド人の科学者がいるから、そうだね、略してチャンドラはどう?」
そういう訳で、象の名前はチャンドラになった。
この象は当時住んでいた東京の家に置くには大きすぎたので、逗子の家に連れて行き平和にしている。
名付け親の梅園さんは、残念ながらそれから数年して亡くなられた。

梅園さんから聞いていたラマチャンドランは、確か物理学だったか生化学だったかの分野だったように記憶していたのだが、VS ラマチャンドラン博士はUCSDの教授で、ソークの兼任教授でもあるから、彼か私か(たぶん後者)が勘違いしたのだろう。
今日このブログを書くのにちょっと調べてみると、ラマチャンドラン博士は10代の頃に書いた論文がNatureに掲載されたという、早熟天才系の方らしい。
恐らく、梅園さんなら憧れたに違いない人物だ。

今日私が独立してラボを持てるようになったのには、いろいろな方達との有り難い出会いがあるからだが、梅園さんはその中でも重要人物の一人といえる。
その方が急にいなくなってしまった。
その後出版されたこの本を手に取るのを躊躇したのは、つまるところそんな訳だ。


さて、この本は「幻肢」など認知科学のトピックスについて面白く書いてある。
幻肢というのは、事故などで手足を失った人が、無くなったはずの手足の感覚を持つという現象である。
私は今のところ五体満足だが、足の指に不思議な感覚がある。

私は足の指で「グーパー」ができない。
普通の人でも「チョキ」はできないだろうけど、私の足の指は「グー」はできても「パー」まで開かないのだ。
(整体の先生には、開けるようにグーパーをして訓練した方がよいと言われるが、開かないものは開かないのだから、どうしようもない)
そのせいかどうか分からないが、足の人差し指が中指の感覚で、中指は中指と薬指の間の指のような感覚。
薬指は薬指、小指は小指なので、ちょうど人差し指だけ無くなって、中指と薬指の間に余分な幻の指ができてしまったような按配である。
うーーーん、一体何故?
by osumi1128 | 2005-08-02 00:08

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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