大人の絵本『ちいさな ちいさな王様』
2011年 08月 26日
そんな印象的な表紙の100頁たらずのこの本には、不思議な世界が描かれている。
十二月王二世という名前の王様は、生まれたときが一番大きくて、それからどんどん小さくなっていくという。
生まれたときに何でも知っているのだけど、だんだん覚えていることが少なくなっていくらしい。
つまり、歳を重ねるほど子どもの時代に戻っていくのだ。
王様の住まいは「僕」の家の本棚と壁の間にあって、王様はときどき「僕」を訪ねてきては、遊んだりお喋りしたりする。
王様に言わせれば「おれたちには、これから楽しみにできるものが待っているのだからな。わくわくするではないか!」となるし、「おまえたちは、はじめにすべての可能性を与えられているのに、毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。…」と解釈される。
王様とのやりとりのうちに、「僕」はもういちど世界を自分で想像してみる。
ちょうど、何も知らない子どもがするように。
大人になるというのは、何かを知ることと引き替えに、何かを諦めることだったりする。
大人になっても子どもの心を失わないでいるというのは難しい。
だが、たまにはこんな絵本を読んで、無限の時間があると思っていた頃に戻ってみたい。
最後の挿絵は、ちいさな王様がグミベア(お菓子)と一緒に寝ているところ。
実は王様は自分と同じくらいの大きさもあるグミベアが大好物なのだ!
作者のアクセル・ハッケはドイツのベストセラー作家。
本文と同じくらい素敵な挿絵はミヒャエル・ソーヴァによる。
大人の 世界に飽きたり幻滅を感じたりしている方、あるいは、歳を取ることに不安を抱く方に、ちょっとお勧めしたい絵本。
実は、この王様たちがどんな風に生まれてくるのか、というエピソードはとても素敵なのだけど、期になる方は是非お読み下さい(微笑)。
ちいさなちいさな王様(アクセル・ハッケ作、講談社)