マウスを透明にする魔法
2011年 09月 06日
脳科学総合研究センターの宮脇敦史さん率いる細胞機能探索技術開発チームの成果で、Nature Neuroscience誌にオンライン版で発表された。
この画像で一目瞭然のように、マウス胎児などの固定した試料を透明にできるという技術。
マウス脳の神経回路を3次元再構築するコネクトミクスプロジェクトに貢献
ラット、ブタ、サルなど、マウス以外の実験動物、脳以外の器官・組織にも適用可能
既存の生体イメージング技術のギャップを埋める、ヒト病理標本への応用に期待
(プレス発表文より引用)

プレス発表サイトより引用
魔法のトリックは、尿素で処理をすると、いろいろな材料が水になじみやすくなり、さらに、高濃度の尿素の存在下でも、蛍光タンパク質の蛍光の明るさがまったく減弱しないことなのだが、これに気付いた宮脇研の濱裕さんが条件を工夫して、グリセロールと界面活性剤を添加した試薬を完成させた。
実は「ウェスタンブロッティングのときに尿素で処理をすると膜が透明になる」ことは、分子生物学的実験に馴染みのある研究者ならほとんど知らないはずはない事実。
そんな世界中にごまんといる研究者の中で「これって面白いんじゃない? 何かに使えないかな?」と考えた人が濱さんだったということ。
それが可能だったのは、宮脇研の環境ということもあるかもしれない。
濱さんの上司である宮脇さんは下村先生とともにノーベル化学賞を受賞したロジャー・チェンのところに留学し、さらに独自にさまざまな性質をもった蛍光色素開発に取り組んでいて、研究室には新しいことにチャレンジする空気がある。
しかも、蛍光観察のためには、まさに透明化というニーズが常に身近に存在していた訳だ。
すでに試している知り合いの研究者曰く「すごく簡単ですよ。誰にでもできます」ってことなので、きっとすぐに世界中に広まるだろう。
日本発で世界を席巻している技術としては、電気穿孔法(electroporation)といって、電気ショックで組織に遺伝子導入するものがあり、こちらは、東北大学の仲村春和先生がニワトリ胚への導入に応用し(うちのグループは神経センター時代に全胚培養法と組み合わせてマウス胚への導入を開発したのだけど)、さらに複数の日本人が子宮内手術と組み合わせた系を工夫して、神経発生の分野では広く 用いられている。
日本で生みだされて世界に広がっているのはマンガとカラオケだけではない。
理化学研究所プレス発表詳細(本当はここに元論文のサイトを引用しておいてほしいものですね)
宮脇研HP
プレス発表の元論文の要旨Scale: a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of transparent mouse brain.
YouTube動画
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