9.11とジャズフェスと科学コミュニケーション

本日は9月11日。
3月11日の地震からちょうど半年であり、現地時間ではまだだけど、10年前にニューヨークの世界貿易センターに自爆テロ機が突っ込んだ日。
被災地である仙台では今年で21回目になる定禅寺通りジャズフェスティバルの2日目だった。
メインの会場は定禅寺通りや、一番町、勾当台公園などだが、仙台駅でもあちこちのスペースでライブが催されており、初売り、七夕に次ぐくらいの賑わいを見せたのは嬉しい。
いわゆる屋台も沢山出ていたけど、地元のお店が出店を出しているのもイイ感じ。
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ちょっと離れた会場としてはWestinホテル隣のトラストシティの広場も使われていて、宿泊客らしい方々や地元の人々がコンサートを聴いていた。
音楽は心を癒したり、昂めたりしますね……。
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昨日はすでにご案内していたように、第34回日本神経科学大会のサテライトイベントとして、市民公開講座が行われた。
東北大学医学系の虫明先生の「問題を解く脳の働き」から始まり、主に大脳皮質の前頭前野のお話の後、東大薬学の池谷裕二さんの「薬の話ーアセチルコリンと記憶をめぐって」ではナス科の植物の薬効から最後はアルツハイマーの薬に至り、続いて本学医学系の谷内先生が抗ヒスタミン薬が脳を鈍らせる「鈍脳」について紹介され、トリを務められたのは総研大の長谷川眞理子先生で、進化の観点からヒトの心の営みに近づいて、前頭前野の話も出てきて、非常に有機的に繋がった公開講座だった。

ジャズフェスも開催されていたが、加えて国際センターでは裏番組として吉本興業のイベントまで行われていたが、まぁ、こちらのイベントとはあまり聴衆は被ってはいなかっただろう(苦笑)。
未来の脳科学者となるかもしれない高校生に向けてというつもりで主催したが、やはり勉強熱心な高齢者の方々の参加は結構多かった。

終了後に講演者の方々とご飯を食べに行ったが、そのときの長谷川先生のお話が多岐に渡り、とても興味深かった。
眞理子先生曰く「今回の原発問題では、本当に日本には科学コミュニケーションが欠けていることがよくわかった」とのこと。
また「日本は平時には強いけど、有事のことは考えていない」とも。

平時に「いかに〈効率よく〉物事進めるか」については優れているけど、それは必ずしも〈合理的ではない〉ことも問題だ。
したがって、何が起きるかを広く想定して〈合理的に〉対応するなんてことが下手になる。
よく引き合いに出す例だが、キセル等の違法乗車の検挙を効率よく100%近くにすることは平時の対応だから可能だが、そこにかけるコストと得られる収入はアンバランスであって、合理的ではない。

これまで「合意社会」でやってきたのも、瞬時の判断力が求められるような「未曾有の事態」には向いていない。
10名だか20名だかが顔を揃えて、それぞれの思惑をおもんばかってからでないと動かないようでは、すべてが後手後手になってしまう……。

新たな内閣で早くも辞任した大臣(注)がいるような政府を建て直すのに即効性のある薬は無いが、国民全体の科学リテラシーを上げることは必須だと思う。
施策に関わる政府も行政も、これまで以上に科学の知識が必要な時代となっている。

【注】
この大臣の発言が記者クラブの「言葉狩り」によるものかどうかについて、筆者には判断できない。
ただ、国の大臣をとっかえひっかえすることがだんだん「普通」になってきつつあることには違和感を覚える。
そのたび事に天皇陛下の認証を受けるのは、なんとも陛下にはお気の毒なことである。
by osumi1128 | 2011-09-11 19:46 | 雑感

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