岡本先生の『種の起源』初版本【ちょこちょこ加筆】
2011年 10月 15日
本当は4月に行うはずだったと思うのだけど、震災の影響で順延されたもの。
この式典に合わせて、ダーウィンの『種の起源』の初版本(最初に刷られた1250部のうちの1冊)の贈呈式も行われた。
この稀覯書を贈呈されたのは、東北大学医学部名誉教授の岡本宏先生。
贈呈式でのスピーチ用のPowerPointに載せるために、先日、広報室で本の撮影を行うことになり、たいへん光栄なことに立ち会うことができた。
(この画像はiPhoneにて撮影したスナップです)

糖尿病に関するご研究で日本学士院賞も受賞されている岡本先生は、ダンディーでお洒落であるとともに、なかなかの趣味人でいらっしゃるのだけど、古書の収集もされていらして、この『種の起源』も長いこと探していらしたらしい。
「ノーベル賞なんて、コペルニクスやガリレオやダーウィンに比べたら大したことはない」というのが岡本先生の持論で、『種の起源』はいわばその象徴なのだ。
奇跡のような出会いは14年前に訪れたニューヨークで訪れた。
ウォルドーフ・アストリアといえば、市内でも超高級ホテルなのだが、岡本先生が定宿にされていたのは、そこにBauman Rare Booksという古書店があるから。
「The origin of species」の初版本があると聞いて、岡本先生は何が何でも欲しいと思われたのだが、さすがにクレジットカードを限度額いっぱい4つくらい使っても払えない金額。
仕方なく手付け金だけ置いて、残りは日本に帰国してから送金する、ということになって、「払えなかったら彼が購入すると言っている」と同行されていたご友人のニューヨーク大学の先生も巻き添えにしてキープ。
無事に届いてからは自宅に小さな金庫を購入してその中に保管していらしたので、『種の起源』初版本は3月の震災も無事に生き延びた。
広報室での撮影には岡本先生に縁の深い数名の先生方も立ち会って、少し掠れた金文字の背表紙や、エンボス加工された表紙、最初の頁や最後の頁を撮影した。

「進化」という概念は、もともとは「地球上になぜこんなに多様な生物がいるのだろう?」という疑問に対する仮説の一つとして提唱されたものだ。
現在「evolution」という用語が宛てられているが、これはこの本の一番最後にある、そして一箇所しかない「evolved」という動詞からきている、ということを知った。
There is grandeur in this view of life, with its several powers, having been originally breathed into a few forms or into one; and that, whilst this planet has gone cycling on according to the fixed law of gravity, from so simple a beginning endless forms most beautiful and most wonderful have been, and are being, evolved.

【関連リンク】
Asahi.com:種の起源の初版本、東北大に寄贈 名誉教授の岡本さん
Wikipedia: On the Origin of Species
東北大学附属図書館の百周年記念講演会by瀬名秀明さん関連Twitterまとめ「科学と人間の未来、そして物語の力」
渡辺政隆さんの訳した『種の起源』(光文社古典新訳文庫)