フェルメールからのラブレター展@宮城県立美術館

仙台のアート事情がそれなりにリッチなことは幾度となく書いてきたが、東京のように「激混み」(←例えばこれ)ではない状態で作品鑑賞できるのは何より有り難い。
京都から仙台に巡回してきた「フェルメールからのラブレター展」を宮城県立美術館に観に行く機会を得た。
しかも、閉館後に人払いをして頂いた、ものすごく贅沢な空間で!
さらに、今回の企画に関わったキュレーターのお一人である林綾野さんの解説付きで!!!
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(許可を頂いて撮影しています)



ジャンルで言えば、印象派よりもオランダ絵画や世紀末のウィーンの画家の作品が好きだ。
中でもフェルメールはラピスラズリの美しい青も印象的だが、私にとっては顕微鏡の父と言われるアントニ・ファン・レーウェンフックと同世代、もしかすると交流があったのではないか、という話を知ったときから、普通の画家とは違うフォルダに入れている。
ちなみに、生命科学研究者の福岡伸一さんは、かなりしつこくこの説にこだわっておられるようで、その「推理」に興味のある方は近著『フェルメール 光の王国』(木楽舎)を参照されたい。

フェルメールは寡作なので、30数点の作品のうち3点、手紙関係という意味で言えば、6点のうちの半数を同時に観られるだけでも貴重な展覧会。
ちなみに、先日の学会の際に訪れたワシントンDCのナショナル・ギャラリーには4点も収蔵されているのだが、そのうちの1点が今回、来日していた「手紙を書く女」である。
(でも「天秤を持つ女」に会えたのはラッキーでした!)
フェルメールの作品に何度も登場する、白い毛皮で縁取られた黄色いガウンを着た若い女性が、羽ペンで手紙をしたためつつ、こちらを向いて柔らかく微笑んでいる。
ポスターになっている「手紙を読む青衣の女」は、修復後、本国に先駆け日本初公開ということで、上着の青が鮮やかで印象的なのだが、それよりも私は「手紙を書く女」が好きだ。
もう1点は「手紙を書く女と召使い」で、こちらは典型的な「フェルメールの部屋」(左側にガラス窓、格子柄の床、壁の絵画、机、椅子などを伴う)にいる女性のうち、真ん中の召使いのつまらなそうな顔(苦笑)に想像力をかきたてられる(「…ったく、いつまでかかるのかしらね? ご主人様ったら…(略)」)。
そう、フェルメールの作品に心が揺さぶられるのは、この「曖昧性」なのだと改めて思う。

今回の特別展は宮城県立美術館にとっては開館30周年を記念したものでもある。
フェルメールと同時代のピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなどのオランダ絵画から、「手紙」等の「コミュニケーション」をテーマにした作品を集めている。
林さんによれば、当時のオランダの識字率は60%ほどもあったそうで、それは敬虔なプロテスタントとして聖書を読むためでもあり、また、商人の力が強くなって契約書等の公文書を取り扱う専門家も多かったからで、ラブレターの指南書さえあったらしい。
(まぁ、ラブレターの歴史で言えば、日本の平安時代の方がずっと早いかもしれないが……)

フェルメール展企画の途中で3.11大震災が生じた訳だが、幸い、宮城県立美術館には損傷は無かったため、開催は可能となった。
副館長・学芸部長の有川幾夫さんによれば「すでに6万人超えたでしょうか……」との来場者らしい。
きっと、これから12月12日までの後半にも、さらに伸びることが期待される。
是非「復興へのラブレター」を観に県美へGo!

そうそう、最後にもうひと言、県美の1階のカフェはこの10月からとてもお洒落にリニューアルしました。
カフェモーツァルト」のディレクションです。
レストラン「パパゲーノ」も行ってみたい。
フェルメール展が終わっても常設展はありますし、県美に行くお楽しみが増えましたね♪
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【関連リンク】
「フェルメール 全点踏破の旅」(朽木ゆり子著、集英社親書ヴィジュアル版)
フェルメールラバーのお一人で、他にも関連著書が多数ありますが、こちらは新書版でありながら多数の美しい写真が掲載されているので眺めるだけでも楽しいです。
気軽に持ち運べるので、フェルメール展のお伴にもよいかも。
表紙の左側が「修復前」の「手紙を読む青衣の女」ですね。

「フェルメールの食卓 暮らしとレシピ」(林綾野著、講談社ARTピース)
今年、日本で開催されるフェルメール展に合わせて刊行された可愛らしい本。キュレーターの林さんが、フェルメールの時代のオランダの暮らしについてレクチャーされ、さらに、フェルメールが食べていた(かもしれない)17世紀オランダのお料理再現!
ご自分でレシピを想像して作品(お料理)を作られるのだそうです。
キュレーターのお仕事って、こういうアウトプットの方向性もあるのですね。
直にお話を伺っていて、その調査力、推理力はサイエンティストのようだと感じました。
後で「情熱大陸」にも出演されていたことを伺いました。

「フェルメール 光の王国」(福岡伸一著、木楽舎)
元々はANAの機内誌に掲載されていたものをまとめた本ですが、こちらもフェルメール展に合わせて出版されたのでしょう。
フェルメールは全部で多く見積もって37点しかないためか、「全作品踏破」の願望を抱く方が絶えないようです。
福岡さんは幸運にもお仕事としてそのチャンスを得た訳ですが(いいなぁ……)、
レーウェンフックが英国王立協会宛に送った手紙(=研究成果の公表)に添えられた図のうち、何点かはフェルメールの手によるものではないか?という推理を展開されています。
その真偽はともかくとして、フェルメール、レーウェンフック、ライプニッツ、ニュートンらがほぼ同世代に生きていたということに、改めて17世紀ヨーロッパの輝かしさを思わずにはいられません。
以前、日立グループの百周年記念イベントで荒俣宏さん、瀬名秀明さんと鼎談を行った際、福岡伸一さんはその後のパネルディスカッションの方に登壇されていたのですが、お名刺交換できなかったのが残念。
書評はこちら

フェルメール展@Bunkamuraザ・ミュージアム
12月23日〜来年3月14日
公式HP

ナショナル・ギャラリー@ワシントンDCで出逢えた「天秤を持つ女」はこちら。
静謐な雰囲気が大好きな作品です。
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by osumi1128 | 2011-11-26 10:48 | アート

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