シャンジュー先生、市民公開シンポジウム、電子書籍

国際シンポジウム最終日は嗅覚系よりさらに広い認知機能の話題となり、オオトリの講演を務めたのは、フランスの大御所、ジャン=ピエール・シャンジュー先生。
タンパク質のアロステリック効果で生化学分野において一世を風靡された後に、神経科学の方へ興味を広げられ、神経伝達物質受容体の機能やさらには認知科学関係の論文も多数出されている。
『ニューロン人間』『考える物質』『脳と心』などの著書や著名な学者との対談は翻訳でも読むことができるので、日本でもよく知られている方だが、お目にかかるのは初めてだった。
シンポジウムの間もかなり質問をされておられ、1936年のお生まれながらお元気なこと!
プレゼンには多数の論文からの引用があって、その中になんと、前脳の発生メカニズムに関する自分の昔の論文(Inoue et al., Dev Biol, 2000)もあって驚いた。
うーん、さすがシャンジュー先生、興味の範囲が広いってことね……。

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さて、土曜日には日本学術会議の神経関係3分科会が主催した市民公開シンポジウムが開催され、開会挨拶と第一部の座長を務めた。
ポスターはこちら
今回のテーマは「脳と睡眠」だったのだが、最初の講演者の桜井武先生(金沢大)が導入として「睡眠とは」という定義から話され、最後は桜井先生が同定されたオレキシンの睡眠や摂食に関する機能について触れられた。
お二人目は上田泰己先生(CDB)の「時間の生物学」のお話。
朝・昼・夜に働く分子達の機能(誘導や抑制)について、聴衆を3分割して立ったり(オン)座ったり(オフ)してもらう、という「参加型」のパフォーマンスを取り入れておられた。
その他の講演から、睡眠障害は案外多いことや、このたびの東日本大震災以降に、東北地方で睡眠障害が酷くなったり、新たに悩むようになった方も多いことを知った。

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科学を伝える方法には、講演やサイエンスカフェや科学館のような展示もあるが、古典的ともいえる「著書」というのも、決して廃れることはないだろう。
できれば、ほとんどの著書はむしろ電子化してもらって、いつでもどこでも欲しい知識に安価にアクセスできる環境になった方が、科学を伝えるという目的には適っていると思う。
もちろん、私自身は本の手触りや紙とインクの香りも好きだから、お気に入りの「リアル本」に囲まれていたいと願うけど、スペースの問題や「あれ、どこだっけ?」という検索には電子書籍の方が圧倒的に優れている。

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今週末は京都で科学イベント。
科学・技術フェスタ in 京都 2011
パネル討論「科学者との交流プログラム〜憧れること、学ぶこと〜」のコーディネータを務めます。
仙台からを含めて数名の現役高校生も参加予定。
関西方面でお時間のある方は是非、宝ヶ池にGO!
by osumi1128 | 2011-12-11 22:38 | 科学 コミュニケーション

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