旅の総括〜ムンバイ編〜

海外出張の経験を重ねるうちに、いろいろ用意周到になったりして、なかなか数年前のギリシア出張のようなアドベンチャーに恵まれなくなったのだけど(苦笑)、それでも今回のインド出張は予想外のことがいくつかあった。
最大の誤算は、事前にネットで調べた気温が28℃〜30℃だったので、うわー、それは大変!と半袖やら薄手のスカートやらを仕込んでいったのだが、学会の会場のエリアはそれよりも気温が低く、なおかつ、ホールやロビーのエアコンはキツイくらいで、持っていった衣服の三分の二は出番無し。
やれやれ、3日目朝からなんだか具合が悪くなり、午後のセッションやカンファレンスディナーをパスってしまった。
ミーティングというのは人に会って話をして、知り合いになったり、まだ見発表の情報を得たり、これからこんな方向を目指しているっていう腹の探り合いをする、なんていうことが一番の目的なのに、これは本当にもったいないことであった。
まぁ、それでも、その他の日の昼食、夕食どきや、ブレイクの間に将来の共同研究の話を進めたりはできたし、実際にどれだけ実現できるかを考えたら、十分な収穫ではあったとは思うのだけど。
旅の総括〜ムンバイ編〜_d0028322_2053174.jpg
Mumbai, Jan 2012
画像はタタ研究所からに面した海岸の夕暮れ。
悠久の時間を感じる。



2つ目の予想外の事態は、インターネット環境が「非常に」悪かったこと。
学会指定のホテルはそれなりのクラスだと思っていたのだが、回線の細いことといったら、例えばブラウザで画面が読み込まれるのに時間がかかるのは当然として、「上り」の制限がさらにキツく、メールの返事にその前のやりとりが何通も付いていると送れない(そのことに気づいて対策を講じるのにかなりかかった……)。
学会場のネット環境も2日目に(前日は繋がったのに)なぜかアクセスできなくなって悪戦苦闘。
(この間、ロビーの気温が低かったために風邪を引いたのだと思う。)
もはや、インターネットに繋がって情報を得たり、発信することは自分の身体能力の一部と化している感があり、それがうまくいかないと、あたかも自分の能力そのものが損なわれてしまったように落ち込む。
(この気持の落ち込みが、さらに風邪の症状を押さえ込むことができなかったことにつながっている、のかな)

3つ目は、セキュリティーの厳しさ。
ホテルの入り口では毎度、荷物のX線検査(必要に応じてボディチェック)。
学会場は有名なタタ研究所で、ここは元々、核物理学の研究所だったこともあるだろう、入り口で学会の名札を付けていなければ入れない。
写真撮影の制限も多く、空港もダメ、ホテルもダメ……なんだかなぁ、旅に出た気持ちが削がれてしまった。
ムンバイ(昔のボンベイですね)は、イスラム教徒とヒンドゥー教徒の対立もあって、昨年だったか同じ系列の別のホテルがテロの襲撃にあったくらいだから、警戒態勢が厳しくて、そこここに軍人らしき人がいる。
15年前に南インドのバンガロールとマイソールを訪問した際よりネガティブな印象を持ってしまったのは、そんな緊張感のある空気に加えて、体調も影響しているのかもしれない……。

インドという国は、現在の人口が12億弱くらいだから、とてつもなく人が多いのだけど、空港に降り立った途端にそれを感じる。
セキュリティー関係にしろ、空港内の清掃関係にしろ、日本の感覚なら一人で済みそうな仕事を二人か三人で行なっているような印象なのだ。
ホテルの中、軍隊関係、警察関係も同じ。
なので、たいてい持ち場では、その二人三人でダベっている(つまり、人と人のコミュニケーションは多い、ともいえる)。
ワークシェアリング、雇用創出の形態でもあるのだろう。
帰りのタクシーの車窓からビーチが見えたが、ちょうど土曜日とあって、多数の家族連れやらカップルやらが休日の時間を過ごしに来ていた。
iPodや携帯をいじるのではなく、語らう方がずっと人間的だよね、と思いつつ、そういう生活に戻るのはきっと難しい。

そうそう、帰りのタクシーは一悶着、というほどでもないのだけど、ホテルのベルデスクに預けた荷物を積んで夕方、学会場でピックアップしてもらうはずが、若干時間変更をお願いしたためにトラブルが生じた。
会場に迎えに来た車には荷物は無く別のものだったので(しかもドライバーは英語不案内……)、再度ホテルに戻り、どうなっているか訊いたら「貴女のためのタクシーは荷物を積んでタタ研究所に行った」という。
「大丈夫。すぐにこちらに戻すから……」ということで、最短時間で空港を目指したはずが、30分のロスタイム(苦笑)。
まぁ運転手さん(こちらは英語通じた)の「大丈夫。余裕で間に合うから……」という言葉通りであった。
「日本には徴兵制はあるか?」という質問が印象的に残った。


成田空港のビル内に足を踏み入れた瞬間、日本に着いた安心感に包まれた気がしたのも、きっときつもより体調が良くなかったからだと思うのだが、この「安心安全」な可愛らしい国を維持するためのエネルギーとコストはどれくらいのものなのだろう?
グローバル化するってことは、どうしたって「低い方の基準」に合わせる必要がある。
自国の文化や伝統を守りつつ開かれた国にしていくにはどうしたらよいか、そんなことを考えたムンバイ出張であった。
旅の総括〜ムンバイ編〜_d0028322_20533294.jpg
Mumbai, Jan 2012
画像は空港までの途中で少しだけ立ち寄った眺めの良い公園の出口で「ねぇねぇ、写真撮って!」と言ってきた若い女性二人組+赤ちゃん。
by osumi1128 | 2012-01-15 21:00 | 旅の思い出

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31