『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』【ちょこっと加筆】
2012年 01月 28日

阪大生命機能・医学系研究科の仲野先生のご専門は幹細胞生物学(より広い意味で)。
オビはご友人(○○友達)の内田樹氏による。
雑誌『細胞工学』に隔月で20回に渡る連載をされたものをまとめたものだが、これだけまとまると現代の生命科学を築きあげて来た著名な科学者はかなりカヴァーされ(取り上げられていなくても、話の中に出てくる)、生命科学というジャンルの科学史としても面白く読める。
とくに冒頭の年表は、そうか、野口英世と森林太郎(森鴎外)と北里柴三郎はほぼ同世代だったのね、などがわかってとても有難い。
「伝記を読むのが好き」という仲野先生は、(私は元本を全部読んだのではありませんが)元の自叙伝や伝記以上にその人物を生き生きと描いておられて、教科書で読む生命科学の研究成果は、確かに、それを成し遂げた「人間」がそこにいたことを思い出させてくれる。
私としては、随所に散りばめられた「仲野先生の研究哲学」についてのコメントがとても楽しかった。
伝記が書かれるような偉人は、10のマイナス7乗くらいの確率でしか存在しない(実は10分の1のラッキーが7回連続して起きるだけ、ともいえる)ので、「普通の」生命科学者としては、堅実に進むしかないなぁ、とも思った。
それにしても、以前、拙ブログで取り上げたリタ・レヴィ=モンタルチーニの自伝『美しき未完成』(藤田 恒夫, 赤沼 のぞみ, 曽我 津也子 (翻訳) 、平凡社、1990年刊行)もそうだが、ここで取り上げられている19冊の自伝・伝記本のうち、実に13冊が絶版か品切重版未定となっているというのは、生命科学研究者育成という観点からみていかがなものか?
こういう本こそ、是非、電子書籍にでもして頂いて、未来の生命科学者の卵たちに読んでほしいと切に願う。
あ、それから、仲野せんせい、生命科学者ではないですが『渚の唄―ある女流生物学者の生涯 』(加藤恭子著、講談社、絶版)も是非、読んで下さ〜い!
【関連ブログ】拙ブログ:団まりな先生ご来訪:『渚の唄』ふたたび