初めての遺骨返還式
2012年 03月 10日

ふぅ、明日からはゆっくり話が聴けるはず。
その話の前に、金曜日に参加した遺骨返還式のことに触れておきたい。
医学部・歯学部の学生教育において、解剖実習は少なからぬウェイトを占めている。
通常、専門教育のもっとも初めに置かれることが多く、少なくとも2年次の終わりまでに(昔は教養が2年だったので、3年次)、学生たちは人体にメスを入れる経験をする。
もちろん、生きている人間ではなく、「献体」として、生前に各個人の意志に基づき、例えば白菊会などの献体を受け付ける団体に登録され、お亡くなりになった後にご家族の同意のもとに提供されたものを使わせて頂く。
これまでは合同慰霊祭は行なっていたのだが、直接、献体された方のご遺族の方に、ご遺骨をお返しする儀式を執り行うのは今回が初めて。
医学部・歯学部の解剖実習に供された献体は30体ほどだが、代表して医学系研究科長の慰霊と御礼の挨拶から始まり、医学部・歯学部の学生代表それぞれの感謝の言葉、文部科学大臣からの感謝状の伝達と、ご遺骨の返還がメインのセレモニーで、ご遺族の代表の方のご挨拶があり、最後は参加者全員の献花で終了となった。
教育的配慮も込めて、今回、かなり多くの学生さん達がこの式典の実行に関わった。
ご遺骨を実際にお渡しする(一旦は医学部長・歯学部長からご遺族に手渡され、それを引き取って包み直してお渡ししていた)だけでなく、会場へのご遺族の誘導なども。
式次第や段取りには教務係の方々が総動員。
2月、3月は入試やら学生の進級判定やらで忙しい時期なので、さぞかし大変だったのではと推察する。
遺骨返還式を行うことにされたのは出澤真理先生。
ご遺体がただの「人体」なのではなく、確かにあるときまで生きておられたことや、ご家族があったことを肌で感じてもらうのにこのセレモニーが大事であると主張されていらした。
確かに、学生さん達も緊張の面持ちで臨んでいたと思う。
ご遺族の代表の方のお話は心に染み入るものだった。
……父は生前、鑑識の仕事をしており、その関係で法医学の先生から献体の重要性を学んだといいます。今日、遺骨として戻され、最後に息を引き取った2年半前を思い出しました。解剖実習をされた学生さん達の役に立って嬉しいと思っていることと思います。……
それぞれのご遺族も、それぞれに思うことが多々あったことだろう。
心から感謝を込めてご冥福をお祈りしたい。
合掌。