『ピアニストの脳を科学する』(古屋晋一著、春秋社)

『ピアニストの脳を科学する』(古屋晋一著、春秋社)_d0028322_0481365.jpg中学の途中までピアノを習っていた。
小学生高学年のときに某音楽教室に通って「調音」のトレーニングを受けたために、「ドレミ」の音が「ドレミ」という文字としても認識される。
このことを「絶対音感」というのだと知ったのは最相葉月の本が出てからで、それまでは「なんで皆、ウォークマンを聞きながら勉強できるのだろう?」と不思議に思っていた。
マクドナルドの店内のざわめきは気にならないのに、クラシック、とくにピアノ曲がもっとも駄目。
絶対音感も含めた「共感覚」は、例えば聴覚と視覚の間に特別な神経結合が生じてできるのだと考えられている。
私の場合なら、音階としての「ドレミ」が文字としての「ドレミ」になってしまうので、本を読んだり文字を書いたり(タイプ含む)するのに邪魔になるのだ。
結局、プロの音楽家になった訳でもなく(とてもじゃないけど、そんな才能が無いことが自覚できた)、私にとっての共感覚は厄介なだけですね。
……やれやれ。

さて本書『ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム』をどういう経緯で見つけたのか覚えていないのだが、速攻でAmazonさんの「1クリック」のお世話になった。
翌日には届く(都内ならその日の場合もあるだろう)というのは有難い。
文庫ではないので出張に持ち歩く気がしなかったため、寝る前に読む本として少しずつ読んでいたものを昨日で読了。
音楽に興味がある、楽器を演奏することがある方なら、とても楽しめる本だと思う。




筆者は3歳からピアノを始め、コンクールで賞も取ったりしたのだが、ピアニスト特有の病気を患い、ピアニストとしての道を諦め、ピアニストを科学する道に進んだ。
現在はハノーファー音楽演劇大学にて博士研究員をされている方。
日本でも音楽療法(音楽を使って脳卒中後のリハビリをするなど)の研究などはあるが、まともにピアニストを多数集めて、その脳画像を撮影したり、という研究は欧米の方が圧倒的に進んでいる。
予想通りといえばそれまでなのだが、たしかに、ピアニストの脳は例えば指を動かすのに対応する大脳新皮質の領域が広がっているらしい。
(本書では「神経細胞が増えている」と何度となく書いているが、細胞自体が増えているのかは、現在の解析レベルではわからない)

本書では脳科学だけでなく、ピアニストがどのような筋肉の使い方をしているか、などの運動科学の治験も多数含まれる。
著者の願いは、ピアニストを目指す方々に、くれぐれも体を壊さずに効率良く高い技術を見につけて欲しいということにある。

昨日のブログに書いたような「言語の起源」などの研究もそうだが、こういう学際融合的な研究領域は、今後さらに増えていくのだと思う。

【追記】
ブログをアップしたら、著者から2日後くらいにメールを頂いた。
こういうやりとりをすると、地球が狭くなったのだと本当に感じる。
きっとリアルな世界でもお目にかかれる日が来ることだろう。

【関連リンク】
『ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム』(古屋晋一著、春秋社)
著者のHP:neuropiano
『鍵盤を駆ける手―社会学者による現象学的ジャズ・ピアノ入門』(D. サドナウ著、徳丸 吉彦 (翻訳), 卜田 隆嗣 (翻訳), 村田 公一 (翻訳) 、新曜社)少し前の本ですが、面白いと友人から教えてもらったので
東北大学大学院医学系研究科音楽音響医学分野HP
拙ブログ:脳のはたらき
拙ブログ:書評『偉大な記憶力の物語』
拙ブログ:音楽はサイエンス!
by osumi1128 | 2012-03-18 00:48 | 書評

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