『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』を読んで(その1)

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野口悠紀雄氏の本は『超整理法』が最初であったが、先日来『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』(東洋経済新報社)を読んでいた。
リーマンショックの後、2010年に刊行された本ではあるが、まだ賞味期限内だと思うし、「日本の経済低迷を理解するために歴史に学ぶ」として戦後の経済、バブル、そして凋落辿る部分は、歴史なので変わらない。

この本で繰り返されているのは、日本とドイツは1960年代、1970年代に工業製品の産生を強力に進めて大きく成長したが、その後、バブルを謳歌している80年代に、米英が構造改革を図ったのに対して、そのままの路線を続けた結果が、90年代の凋落の原因であるということだ。
歴史というのは皮肉なものだが、70年代にモノ作りでは日本に負けると思った米国では、さっさとIT産業に移行を図ったし、英国では経済の自由化政策によりロンドン・シティに企業と資金が集まってきた。

日本のIT化が上手く進まなかったことについて、私は多くの日本人が情報系サービスに関してのある種「胡散臭さ」を持っていることが原因なのではないかと思う。
それは、PCが広く普及した理由に「エロ動画」をこっそり見たいという欲望が隠されていたり、「2ちゃんねる」というソーシャルネットワークの活用のされ方が得てして「匿名」で「ネガティブ」なものであることから感じるのだ。





2005年にブログを始めたときに「大丈夫ですか? そんなことして……」と言われたし、2009年にTwitterアカウントを取ってつぶやき始めたときにも、多くのアカデミアの知り合いの方々は結構ネガティブな反応を示された。
日本ではむしろ遅れて浸透しつつあるFacebookは「実名で登録しましょう」キャンペーンが展開され、昔の同級生を見つけたりするのに役だっているが、それでも「なりすまし」のアカウントはある。

昨晩に回ってきたTwitterのつぶやきを見てびっくりした。
御確認下さい。 @toshio_tamogami 私の情報では、東北大学に被爆者が搬送されてお
り、すでに700名近くが死亡したと聞いています。東北大学病院がんセンター長の山
田医学博士と、福島原発の現場で働いた作業員の親方からですが・・・・。 @tohoku
_univ_med

いかにもガセのネタだが、それでもリツイート(引用)して拡散されてしまうと、東北大学医学系研究科公式アカウント@tohoku_univ_medとしては対応しなければならなくなる。
東北大・医学系広報担当です。以下のツイートを頂いておりますが、当方では、全く
そういった事態は確認していません。 「私の情報では、東北大学に被爆者が搬送さ
れており、すでに700名近くが死亡したと聞いています。東北大学病院がんセンター
長の山田医学博士と、・・(略)」


Twitterの140文字の制限はトラフィックを軽くするための工夫であるが、リツイートの間に変な削除のされ方をすると、最初の発信元がどのアカウントなのかわからなくなるのは困ったものだ。

一応、震災記録集によると、311震災後に東北大学病院で行われたスクリーニングサーベイは少なくとも422名、うち、除染に至ったのは9名、とのこと。
(なお、上記は業務の一環として勤務時間内に発信しておきます)
by osumi1128 | 2012-04-19 17:25 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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