進化学会

昨日と本日と東北大学の川内北キャンパスで開催された進化学会に参加した。
大学のキャンパスで開かれる学会に出席するのは久しぶりのことだ。
でも、私にとっての最初の学会は、東大駒場で開かれた細胞生物学会だった。
何事も最初の印象というものは強いのだが、今でも直前までデータの差し替えでスライド(いわゆる本当の35mmスライド!)を作り直して、その現像が上がるのを水道橋近辺の喫茶店で待ちながら、午後からのオーラル発表の準備をしていたことを思い出す。

今回、初めて「第7回日本進化学会」なるものに参加した。
参加証なしに「モグリ」のような状態でキャンパスの勝手知ったる講義室に出入りするのはちょっと若返った気がして楽しかった。
(別に、私は初日のシンポジウムの講演者なのだから、当然会員でなくても出入りする権利はあるのだが、初日の受付が混んでいて面倒になったのだ)
それよりも、今回の学会参加は久しぶりに本当に新鮮な刺激を受けた。
これから数日に分けて、ちょっとその話題を取りあげようと思う。

そもそもは、理化学研究所の岡ノ谷さんが北陸先端大の橋本さんとオーガナイズされた「言語の進化」という2コマぶちぬきのシンポジウムで「言語の遺伝子について話してくれませんか?」と言われたのがきっかけだった。
世の中というのはすべて人と人の出会いで出来上がっている。
岡ノ谷さんとは御著書を読んでお名前は知っていたが、直接面識ができたのは今年の2月くらいだったろうか。
ブログにも書いたように、先日7月にセミナーに来て頂いたら、バーターでシンポジウムでのトークをお願いされた。
こういうときに断らない性格が果たして良いのか悪いのか・・・
とにかく、引き受けることは引き受けてしまった。
なぜなら、私は「言語」というものにとても興味を持っているからだ。

ヒト(私はここではカタカナ、すなわち生物学的文脈でのヒトを指す)の特徴はいくつかあるが、その代表的なものは「二足歩行」と「言葉を話す」だと思う。
だが、「二足歩行」は最近、レッサーパンダでも顕著に認められるということもあり、また実験室の中でマウスが立ち上がることを見たことがある研究者は多数いると思われ、私にとっては重要度はそれほど高くない。
(二足歩行が言語の獲得に与えたかもしれない影響は否定するものではないが)

たぶん、今までの人生で一番「言語」に近かったのは、医科歯科大学の学部生時代だと思う。
「入れ歯」の作り方が発話に影響するということを実践的に教わった。
今でも、某仙台地方局のアナウンサーで気になる発音があり、「ああ、入れ歯が合っていないなあ・・・」とお気の毒に思ってしまう。

・・・というのはジョークのつもりだが、私はたぶん「言葉」にうるさいという性質を持っている。
うるさいのが「言葉」だけなのかは不明だが、数少ない幼児期の記憶で、お絵描きに使ったクレヨンをちゃんと正しい順番にしまわないと非常に不満だったということを覚えている。
自分が仕舞うのではなく、祖母(もしかしたら乳母だったかも)が片付けてくれるのに、「そこ、違う。<はだいろ>はここ」などと指示していたのだ。

もう一つ記憶にあるエピソードは、「お后」と「女王」、「王女」と「プリンセス」などの定義を自分なりに考えていたというもの。
今はちょっと定かではないのだが、確か、「何歳までは<プリンセス>で何歳からは<王女>」という風に勝手に決めていた気がする。
まったくもってナンセンスなのだが、何かそういうこだわりを持つヘンな子供だった。

さて、「言語の進化」のゲストスピーカーは必ずしも進化学者ではなく、あるいは言語学者でもない人たちで構成されていて、非常にエンジョイできるセッションだった。
私自身は、Foxp2という名前の「言語の遺伝子」あるいは「文法の遺伝子」と冠の付いた遺伝子のことを紹介しながら、転写因子の変異というものがもたらす意味についてトークを行った。
もし私が今大学生だったら、迷わず私は「言語の遺伝子」に関わる研究をしたいと思ったに違いない。
今から20数年前は、それはほとんど不可能に近い世界だったから、私は面白そうだとは思ったがあまり近づくことはなかった。
現時点で、私にとっては「形態形成」の分野よりも解いてみたい課題がころがっている気がして、「言語に関わる遺伝的プログラム」に非常に興味を持っている。
今on-goingのプロジェクトの成果の見通しが立つまでに、次のプロジェクトを模索したいという気持ちが非常に強くなった。
by osumi1128 | 2005-08-28 23:30

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