『空飛ぶ広報室』を読んで考える大学広報

『空飛ぶ広報室』を読んで考える大学広報_d0028322_22305081.jpgオビにはこうある。
職業、広報官。
取り扱い商品は、
「航空自衛隊」です!
E★エブリスタ連載に「あの日の松島」を書き下ろした待望のドラマティック長編!!


有川浩の新刊『空飛ぶ広報室』を読み終えた。
今回も「自衛隊物」ながら、主人公は航空自衛隊航空幕僚監部広報室に配属になった「元戦闘機パイロット」。

キャラクターの書き分けが上手くて、要所要所泣かせてくれるのは「お約束」。
だが、今回ブログに取り上げたのは「書評」としてではないのだ。





容易に予測できることではあるが、自衛隊では広報担当者を初めから専任で雇用する訳ではない。
陸上自衛隊(陸自)が15万人、海自が4.5万人、空自が4.7万人という巨大な組織でありながら、自衛官として採用された職員の中から「これは広報向きかも」という人材が、それぞれの基地や中央組織の広報担当者となる。
幹部候補は2年くらいで持ち場を移動。

……これって、今の大学広報と(規模は違うが)同じではないか!!!

私は東北大学大学院医学系研究科・医学部の広報室長を仰せつかっているが、他の組織で広報業務を行ったことは無い。
一緒に広報の仕事をする仲間としては、未来館というJST所轄の科学館勤務のN神さんが(現在は東北メディカル・メガバンク所属であるものの)唯一、広報っぽいキャリアを持っているくらいで、他のメンバーも広報室所属になってから、見よう見まねというか、現場で1つずつ仕事をこなしているところ。
大学全体の広報を担当するのも、A木副理事やS根総長特別補佐はそれまで普通の教授だったし、今でも広報だけがミッションではないし、担当事務方である広報課も、現時点では民間で広報畑のキャリアを持っている方が採用されている訳ではない。

さすがに自衛隊広報は、攻めの「広報班」と守りの「報道班」に分かれているらしいが、大学広報はとてもそんな余裕は無い。
どちらも1つの部署で対応している(コンプライアンス関係は別部署だが……)。
むろん毎年30秒のCMを作って流せるような予算も無い。

だが、本質的には広報という組織が裏方であることはどこでも同じだ。
…広報は自衛隊を理解してもらうために存在してる。不本意なことを言われるのは広報の努力が足りてないせいだ。…

この鷺坂広報室長の言葉の「自衛隊」を「大学」に置き換えても十分使えるだろう。

最終章の「あの日の松島」は、主人公の空井の次の着任地が航空自衛隊松島基地という設定で書かれた後日談なのだが、自分も被災地の端にいるようなものなので、どうしても読み心地が違ってしまう。
自衛隊の活動の広報は、トモダチ作戦を展開した米軍の機動力や洗練度からは遠く、自分も被災者でありながら被災地の住民のための活動を優先していたからだなぁ……と改めて当時を思い出した。

あとがきに、本書は「航空自衛隊をネタに小説をお書きになりませんか」とある日突然に持ちかけられて誕生したと記されていた。
実はまさにしばらく前から、「研究者を主人公に小説をお書きになりませんか」と有川浩に売り込んでみたい衝動にかられている。
漫画としては『動物のお医者さん』も『もやしもん』もあったが、私は有川浩にとくに生命科学系の研究者を書いて欲しい。
「うちの大学に、こんなカッコイイ装置があります。こんな面白い、愛すべきキャラたちがいます☆ こんな大事な活動をしています!」ってことを伝えられなかったら、広報担当として失格なんだろうなぁ……。

*****
という訳で(←何が?)、うちで広報関係の人材募集開始しました。
東北メディカル・メガバンク機構、大学院医学系研究科、大学病院
医療系 広報・倫理関係 教員 募集要項(PDF)

経験のある方もそうでない方も、熱意をもって働ける方、是非!
by osumi1128 | 2012-08-06 22:32 | 科学 コミュニケーション

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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