進化学会東北大会・その3

・・・という訳で、進化学会の公募シンポジウム「意識の進化」から面白かった話題を取りあげてみる。
その前に、「日本進化学会」ではなく「日本進化学会東北大会」でした。
(どうりで、第7回というのはおかしいなと思ったのですが、スミマセン)

まず、オーガナイザーである池上さんは、「感じて動いていることが<意識>の元」という考えを披露された。ナルホド、確かに。
私が今マウスやラットの行動解析で指標にしている行動パラダイムは「プレパルス抑制」というもので、これは「感覚運動ゲート機構」を反映すると考えられている。
通常行われるテストは、120dBなどの驚愕音を聞かせると、ネズミは(ヒトも)ビックリするのだが、驚愕音の直前にプレパルス音(例えば70dBなど)を聞かせると、そのビックリ度が減る。
ネズミの場合はビックリ度を圧センサーで測定し、ヒトの場合は眼輪筋の収縮を測る。
つまり、普通はあまり余分にビックリしないようにフィルター機構があるということだ。
ちなみに、このプレパルス抑制は自閉症や統合失調症の患者やその未発症の同胞で低下していることも知られている。

次の演者の岡ノ谷さんは(この学会で3つトークがあったが)、「自己意識の起源:触媒仮説」というものを提示していた。
「他者の<心>を理解する」ことが先で、それに「ミラーニューロン」によるマシナリーが触媒として働くことによって自己意識が生まれる」という説だ。
この説は、理研BSIの入来さんによる「身体像」の研究成果に刺激され、岡ノ谷さんの社会心理学的アイディアが、山崎??さんという方の緻密な理論武装によって醸成されたのだという。
いずれどこかで書かれたものになってお目見えすることだろう。

茂木さんの話はNeural theory of emotional evolutionということが面白かった。
本の中にも引用されていたが、人間には不確実性を喜ぶところがあり、これは単純な進化の理論とは噛み合わない。
別にギャンブルを持ち出す必要もなく、「予期しない面白いこと」が起きると、予期されることよりもずっと楽しいことは、皆経験があるだろう。

郡司さんのお話は、「ロボットは意識を持つか?」ということをテーマにされていたのだと思うのだが、ゴメンナサイ、よく分かりませんでした。
そもそも発音が聞き取りにくいのに加えて、数式が沢山出てくるんです・・・(涙)
さらに、「・・・これを<質料>と定義します」など、私には何故?というような用語が創生され、ますます頭は混乱。
たぶん、あと3回くらい聞いてみないと駄目だろう。
(たぶん、書いたものを読んでも挫折しそうだ)

最後は石黒さんだが、「アンドロイドサイエンス:人工的な意識は作れるか?」という刺激的なタイトルで、中身も非常に刺激的だった。
まず、ヒト型ロボットがこんなに進んでいるとは知らなかった。
まさに、もうすぐ『アンドリュー』の世界のような気がする。
非常に面白かったのは、「アイボ」や「パロ」などの愛玩ロボットからだんだんヒトに似せていくと、あるところで「ヒトのようでヒトらしくない」ので「気持ち悪い」という反応が現れるという実験結果。
またそのような「気持ち悪い」ヒト型ロボットを見せたときに、3歳児くらいまではあまり「ヘン」と思わないのだが、4歳児くらいから「どうもコイツは普通のヒトらしくないぞ」ということを察するようになるとのこと。
お嬢ちゃんが4歳になったときに型をとってハードウエアに着せて作ったアンドロイドは、小さかったので頭の部分にしかアクチエーターを入れなかったところ、頷く動作一つでも、「何かヘン」に見える。
つまり、ヒトは本当は頭だけ動かしているつもりでも、そのバランスを取りながら体の他の筋肉も使っていて、そういう動作を見慣れていると、アンドロイドは「ちょっとヘン」な動きに見える。

ちなみに、アンドロイドの皮膚はシリコン製なのだが、これはある商業ベースに乗った技術を応用したものらしい・・・ちょっとこのブログに書くのは憚られますので、知りたい方は個人的にお問い合わせ下さい。
(この情報は学会で得たものではないことを明記しておきます。念のため)

なお、このシンポジウム会場には「在野の研究者」という肩書きの、進化学会の有名人の方が来ておられ、「他者の心を読まない」質問やコメントを繰り返していたのが面白かった。
いやーーー、進化学会は奥が深そうだ。
by osumi1128 | 2005-08-29 23:04

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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