研究者による科学コミュニケーションのガイドライン策定に向けて

……というながーいエントリーを挙げたつもりなのに、アップされていない……orz
さすがに書きなおす気持になれないので、明日の朝まで待ってみます。

……と書いておきましたが、駄目でした……orzorzorz
ええと要点は、
1)昨日は神経科学大会初日、朝いちばんで科学コミュニケーションに関するシンポジウム(本エントリーのメインの話題)、ランチョンセミナー(岡野栄之先生の前座と座長)、塚原仲晃賞受賞講演の笹井芳樹先生の分の座長、など盛りだくさん
2)科学コミュニケーション委員会では、今後、神経科学者からの発信に関するガイドラインを策定することを目指し、読売新聞のデスクの方を交えた議論を行った
ということでした。
追って加筆しますが、その折に話題に出た“寝る子は「海馬」も育つ”というyahoo記事についてだけ、時事ネタでもあり、東北大学関係なのでご紹介しておきます。
研究者による科学コミュニケーションのガイドライン策定に向けて_d0028322_0151495.jpg




東北大学メディカル・メガバンク機構の瀧靖之教授が、神経科学大会で発表する内容が学会からのプレスリリースに選ばれて、大会前日に記者会見が為されました。
それを受けて、瀧先生が所属する東北大学メディカル・メガバンク機構では、その内容をHPにアップしています。
“記憶にかかわる脳の海馬は、睡眠時間が長い子供のほうが、より大きい“ 瀧靖之教授の研究が第35回日本神経科学大会・記者会見で取り上げられました。
これが各種メディアに載ったのですが、例えばYahooニュースではこんなかんじ。
寝る子は「海馬」も育つ=脳で記憶や学習担う部分―子ども290人測定・東北大
新聞各紙にも取り上げられています。
東北大学からの発信では
瀧靖之教授研究成果 内容 ―健常小児における海馬体積と睡眠時間との相関―

とあくまで「相関性」であるということを伝えているのですが、yahooニュースでは因果関係っぽくなっているのは、どうか、ということが議論になり、科学的正確さとわかりやすさ、一般市民の興味をひくかどうか、などについて盛り上がったのですが、実は、この発表は演題要旨を出した後にNeuroimageという雑誌に受理されていました。
Sleep duration during weekdays affects hippocampal gray matter volume in healthy children
これはパネルディスカッションのときに中身を見ていなかったのですが、部屋に戻ってブログを書くために検索したら、動詞が「affects」だったのですね〜。
うーん、私なら「is associated with」にするべきタイトルかなぁ、と思うのです。
つまり、海馬の灰白質の容積が大きい健常児の方が睡眠時間が長い、あるいは海馬が大きい「と」よく眠る、という逆の関係を否定することは、このような相関性を調べる研究ではできません。
「睡眠時間→海馬の大きさ?」という仮説を立てるのであれば、実際に例えばマウスを断眠させて育てると海馬が小さくなる、運動させると睡眠のメリハリがついて海馬が大きくなる、などの実験をして証明すべきだというのが、基礎研究者の理論です。

実際、その可能性は十分に考えられます。
というのは、運動させると睡眠のメリハリがついて神経新生が向上する、ということはうちの研究室でも見ているからです。
Matsumoto, Y., Tsunekawa, Y., Nomura, T., Suto, F., Matsumata, M., Tsuchiya, S. and Osumi, N.: Differential Proliferation Rhythm of Neural Progenitor and Oligodendrocyte Precursor Cells in the Young Adult Hippocampus. PLoS ONE. 6(11), e27628, 2011.
(この論文のメインのデータではないのですが)
たしか、断眠させると神経新生が悪くなる、という論文もあったのではないかと思います。
睡眠物質であるプロスタグランジンの一種が培養系で神経幹細胞の増殖を向上させるという論文も読んだ気がします。
(すみません、調べる時間が今なくて……)

なので、十分に因果関係はありえると思いますが、逆の「海馬が大きい→よく寝る」のかどうかを否定することができるのか、否定されなくてもそれはそれで良いのですが、は別として、現状の論文のタイトルは私には違和感があります。
私はプレス発表の場にいなかったので、どのような資料で説明されたのかなどわかりませんが、とりあえずyahoo記事のタイトルは、必ずしもメディア側が歪めた、というものではないように思いました。

さて、ちょっとこの件が長くなったのですが、読売新聞の科学関係デスクの長谷川さんからの指摘で大事なことは、国民の関心が高いようなことがらは、関係する学会が「統一見解」を出してほしいということと、研究者が発信する際に、「物語の中での立ち位置」を意識してほしい、ということだと思うので、ここにメモっておきます。
(大事な話題で、長く書きたいのですが、ちょっと今日は難しいのです)

……翌日書くと、だいぶ構成が違うエントリーですが、まぁ、良いでしょう。
今日も神経科学大会です。
今年はフルに4日間になって、ちょっと長い感じです……。
by osumi1128 | 2012-09-19 00:15 | 科学 コミュニケーション

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