琳派芸術II@出光美術館【リンク追加】
2012年 10月 28日

京都にお住まいの先生方ほどではないにしろ、外国人ゲストを連れて神社仏閣や日本美術館に行く機会は、それなりにあるので、日本的な美意識を説明するときに「不完全性・非対称性・時のうつろい」をその特徴として取り上げます。
この3つは別々の軸というよりも、互いに関係があると思われますので、その基盤となるメンタリティーが日本の文化の中で醸成されてきたに違いありません。
先ごろ、私の尊敬するせミール・ゼキ先生の論文で「美は眼窩前頭皮質に宿る」という内容のものが発表されたとご紹介しましたが、こういう場合の「一般化された美」は、日本人独特の「サブ・カテゴリー的な美」と、どのように違うのか興味がありますね。
さて、実は会議の開始時間を間違えていたからなのですが(苦笑)、とある東京の用務が休日にあったので、さくっと出光美術館に立ち寄りました。
琳派芸術II
所蔵のお宝がわんさと展示されていて、しかも適度な鑑賞者がいながら館内は静かで、最高の環境。
おもに酒井抱一、鈴木其一を中心とする江戸の琳派の屏風やら掛け軸やらを堪能しました。
抱一や其一は(最近、行く時間が無い)お茶の先生のところに掛け軸がいくつかあって馴染んでいるのですが、尾形光琳の屏風絵で有名な風神雷神図や八ツ橋図の「抱一バージョン」は初めて見ることができ、同様に大胆な構図で六曲一双の「紅白梅図屏風」など、デザインとしての素晴らしさに唸ってしまいました……。
他に、「糸桜・萩図」というものも、春秋の植物の対比に加えて、枝に結び付けられた短冊と色紙で切り取られた人工的な線の意外さが面白く、同様のデザインとしては鈴木其一の秋草図屏風も。
短冊や色紙に「歌」として「文字」が書かれていて、その意見も内容に加わっているのですね。
【他の方のサイトに図が載っていますのでご覧あれ】
絶対にお勧めの展覧会です。
和モノがあまり得意でない方にも、現代的な感覚で受け入れやすいのではないでしょうか。
この前ちょっと立ち寄った山種美術館の「福田平八郎と日本モダン」なども、こういう江戸琳派の延長線上にあるのだと思います。
あ、あと、ここは有楽町駅からすぐで立地条件が良いのですが、休憩コーナーから皇居の緑とお堀が見えるのも和めますね。
それにしても、光琳の八ツ橋がメトロポリタン美術館収蔵というのは、なんというべきか。
ボストン美術館にも日本のお宝が多数ですが(先日、名古屋で里帰りを見損ねました……)、永遠に日本に戻ってきて欲しいものですね。
【関連拙ブログ】遷宮と世界遺産
【関連リンク】
山種美術館:「福田平八郎と日本画モダン」展関連企画フォトコンテスト受賞者発表のお知らせ