これまでのまとめ
2005年 09月 05日
サイエンスプログラムとしては、シドニー・ブレンナーのNobel Laureate Plenary Lectureがまずあったが、大きな会場でのプレナリーが午前午後と2つずつあるというのは、私に言わせればtoo muchだし、一般演題はまったくなくて、シンポジウムが3会場並列で1演題20-30分というのは、テーマがかなり近いような場合は良いかもしれないが、百花繚乱、show caseのよう。
一般演題はすべてポスター、1日当たり250題くらいあって、すべて見るのは至難の業。
すみません、何でも批判するのは簡単ですね・・・
今日までのところ一番面白かった話は、Denis DubuleのHox clustered genesのcolinearityの制御に関するハードコアmolecular biologyだ。
染色体にずらっと並んだ遺伝子たち「全体」を制御するエレメントがかなり離れたところにあるということは、遺伝学者の方たちがあまり知らないことだが、発生分野では比較的浸透している。
これは疾患遺伝子のSNPなどを調べるときにもっと気にしてもらえたらよいのにと思うことの一つである。
そもそも遺伝学ではメンデル以後にまず「遺伝子=酵素説」ということがあったくらいで、フェニルケトン病などの代謝病のような疾患なら、確かに機能分子をコードする遺伝子のミスセンス変異、ナンセンス変異がそのまま影響するだろうが、そのような遺伝子だけが病気の原因ではない。
他の遺伝子のスイッチとなる転写因子に傷が付いたり、転写因子の発現制御領域に傷が付くと、その影響はかなり大きいことが予測される。
Denisの話は別にそういう内容ではなく、ただひたすら、マウスの発生工学を駆使した難易度の高い実験で、しかも数年単位で時間のかかることをよくやっている、そのラボの学生やポスドクは偉いなあ・・・という意味でも感心したのだった。
単に流行のmicroRNAをこの系でやってみました〜というスタイルなのではなく、Hox遺伝子群という体の位置情報を担う遺伝子たちが染色体上に一列に並んでおり、その発現領域が体の前後軸に反映している、という1990年代の発見の中にある生物学において根本的に重要な問題に対して、真正面から取り組んでいるということが非常に素晴らしいと思うのだ。
学会場のあるコンベンションセンターはDarling Harbourという港に面していて、ちょっとポートピアか横浜かというイメージ。
でもポートピアや横浜よりも水面が近くて、和める雰囲気である。
これで天気がもう少し良ければよかったのだが、生憎学会が始まってからは雨が降るやら寒いやら・・・
そう、忘れてきたものは他に、もう少し厚手の長袖セーターとビタミン剤があった。
食べ物はまあまあ、普通のアメリカの学会に行くよりはずっと良い気がする。
昨晩は懇親会で、学会サポートで飲み物、食べ物がポスター会場兼機器展示会場で振る舞われた(私は、昼に食べたシーザーサラダがもたれて、ほとんど食べられなかった)。
今日は、日本人6人+オーストラリア人1人で円卓で中華料理を食べた。
サービスにはデリカシーがあまりなかったが、味は日本の中華料理に近い感じだった(つまり、アメリカやイギリスの中華料理より、シンガポールなどに近かった)。
時差がほとんどないし、日本からの直行便は9時間程度なので、参加者に日本人がやたら多いのは、私としてはちょっと不満。
何のためにお金と時間を使って海外に行くのか!?
まあ、それでも「ハーイ、お久しぶり! 元気?」と挨拶を交わすことができる外国の友人知人もそこそこいたので、まあ良しとしよう。
あ、それから、とっても久しぶりに留学中の日本人に会えたのも嬉しかった。
やっぱりMeetingというのは人と人の出会いの場だ。
さて、先ほどメールをチェックしたところ、学生二人が無事にオンライン投稿したとのこと。
やれやれ、これで学位申請になんとか間に合ったであろう。