古川黎明高校へ再び

昨日はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の宮城県古川黎明中学校・高等学校に行ってきました。
元々は女子高だったものが改組されて中高一貫教育になったところです。
場所は、新幹線なら仙台から一駅、15分程度の古川という駅からタクシーで約10分。
ちなみに、こういう最短・最速ルートでは旅費は出ません(苦笑)。
国の予算のベースは「最低運賃」です。念の為。
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※学校の許可を得て画像を撮影掲載しています。

この日は、午前中に「絆プロジェクト」で訪れたASEAN諸国90名ほどの生徒さん達に、書道や茶道、SSH関連コーナーなどのデモンストレーションがあり、午後は公開授業、そしてSSHの運営指導委員会という、学校側としては盛りだくさんな一日だったと思います。

古川黎明のSSH指定校としての位置付けは、「グローバルな科学リテラシーを理数系の生徒以外にも広げる」というところにあり、さらに中高一貫教育であることを生かして、より早期に動機づけするなどの効果も期待しています。

授業参観はほとんど初めての体験で、今の高校生のリアルな実態(の一部)を観察する良い機会でもありました。
「言偏(ごんべん)」という国語系で表現力を付けるカリキュラムでは、各グループごとにテーマを立てて、各自のお勧めの本を紹介する、というプレゼンの実践を行なっていたのですが、「つかみ」を工夫したグループあり、個人的なエピソードを交えての紹介で聴衆を惹きつけたり、と頑張っていました。
「図を書いてケプラーの法則を理解する」という授業では、理系ではない生徒さん達に、分度器とコンパスで作図をしてもらって、火星の軌道が楕円っぽい(点をさらに加えていけば、滑らかな線になる)ことを理解する、という、手を動かす作業を中心としていました。

こういう高校生を受け入れた大学で、どれだけその学生たちの能力を引き出しているのか、ということに思いを馳せるとともに、どこかの時点でシラバスに縛られない教育、教師等とのインタラクションから学ぶ、究極には自分で学ぶという方向に変換することが必要であって、そこに大学院教育の抱える二律背反的な問題があると感じました。

6月の委員会での報告以降の活動報告では、ベルギー訪問、ケンブリッジ大訪問、タイの王女様の科学高校の1つChulabhorn Science High School Satunとの協力関係を結んだことなどの国際的なものも多数あり、昔とは違うなぁ、と思いました。
ちなみに、王女様はProfessor Dr Her Royal Highness Princess Chulabhorn Mahidolというお名前です(化学でPhDをお持ちです)。
タイにおける科学振興のために全国に12のサイエンスハイスクールを設立し、少数精鋭ですべて国からの支援で科学を目指す子どもたちを育てようとしています。

SSHの活動としても、東日本大震災においてもっとも震度が大きかった地域であることから、災害に関係するフィールドワーク(気象台、東北大学災害科学国際研究所等の見学)などを踏まえた文化祭での発表や、種々のテーマ研究などの様子を伺いました。
古川黎明の場合には、大学がすぐ近くに無いので、どのような課題学習をさせるかなどに、今後の工夫が必要であると思われました。
また、個人的にはプレゼン力も大事ですが、「正確に伝わる文章を書く力」や「論理的な思考」、「統計的肌感覚」のようなものを身につけることが、理系文系を問わず、現代を生きるためのスキルのベースであると考えます。
ともあれ、高大連携などを進める上で、とても参考になる経験をさせて頂きました。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!
by osumi1128 | 2012-12-06 07:57 | 科学 コミュニケーション

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