これからの分子生物学会

第35回日本分子生物学会が阿形清和先生を年会長として、「年会の新しい姿を模索する」というテーマのもとに福岡で開催されています。
演題同士の関係がわかる、iPadやスマホに適したwebサイトの構築や、ポスターの3分トークなど、いくつもの斬新な取り組みがあります。

前日の理事会から出向いて、初日のシンポジウム「大量シークエンス時代の医療分子生物学」、男女共同参画委員会主催ランチョンイベントと緊急フォーラム「研究不正を考える」に参加しました。

「ヒトES/iPS細胞における、遺伝子発現およびDNAメチル化の大規模解析」という演題を、山中伸弥さんが話すはずだったのですが、ノーベル賞授賞式と重なって、代わりに大学院生の大貫茉里さんが発表し、冒頭のジョークから最後の総合討論まで、実に立派な発表でした。

今回のランチョン企画「全員参加の生命科学研究を目指して(パートII:生の声を聞こう!」は、後藤由季子委員長からのこれまでの活動のまとめの後、塩見春彦先生のご講演「意識改革の必要性について」があり、男女ともに無意識のバイアスがあることなど指摘されました。
(先日のNAISTで紹介した「女子学生の方が成績はいいんだよね……」というのも、そういうバイアスが露呈している症例です)

その後、テーブルディスカッションとなり、テーブルごとに異なるテーマでディスカッションが為された後に、各テーブルからのポイントの披露がありました。
この手の企画では一方的に聴くだけよりも、自分で話すこともできる参加型は満足度があったのではないかと思います。
参加者の男女比は4:6くらいだったように思います。
分子生物学会では男女共同参画企画への男性の参加者が、年々増えてきていることは好ましいと感じます。

夕方の緊急フォーラム「研究不正を考えるーPIの立場から、若手の立場からー」では、分子生物学会に深く関係されていた方の論文不正に対する対応について、まず小原雄治理事長からの経緯のご説明がありました。
学会としては、所属機関の調査委員会の報告を待ってからアクションしたかったのですが、その報告がとても遅くなったということがあります。
現在、学会から所属機関への問い合わせをしています。

その後、若手教育問題WG初代座長であった中山敬一先生による「捏造はなくせるか? 現在・過去・未来」という講演がありました。
まず、中山先生は若手教育問題WGが開催したシンポジウムで講演をされた方に関わる疑惑であり、少なくとも何らかの責任を取るという形で辞職された、という事実から、何らかの関与はあるとして、「任命責任」としての謝罪をされました。
生命科学系研究における捏造の問題の根幹には、「データの再現性が取りにくい」ということがあるのですが、それを夏目徹博士の作製された「ラボ・ロボット」の正確な実験と人間が行った実験との比較というデータを元に、「もし、正確な実験を行うロボットがすべての実験を行なって再現性が得られれば捏造は無くなるかもしれない」という未来の話でまとめられました。
【ロボットの動画はこちらを参照のこと(感動的です!)】

その後、パネル・ディスカッションとして、小原先生、中山先生に加えて、岡田清孝前理事長、篠原彰第17期広報幹事とともに次期理事長として参加しました。
フロアからは「学会としての対応が遅すぎる」というご意見を皮切りに、「他のセッションと重なる時間帯で行うべきではない」「不正を監視する第三者公的機関は必要か?」「再現性が怪しいデータが得られたときはどう対応すべきか?」「当学会のオフィシャル・ジャーナルGenes to Cells誌掲載の論文不正については追求できるのではないか?」等、種々の意見や質問が為されました。

この問題は来期への引継ぎとなりますので、きちんと対応していきたいと思います。

明日また福岡に戻ります。
生化学会のシンポジウムの方でトークがあります。
by osumi1128 | 2012-12-13 19:00 | オピニオン | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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