仲村春和先生の最終講義ほか
2013年 02月 16日

研究所の所属でも大学の先生は第一義に「教員」なので、その「最後の授業」はとても大事なセレモニーです。
我が医学系研究科では、今年、大内研究科長の肝いりで、最終講義を医学科の4年生と保健学科の3年生の必修にして、会場も大きな艮陵会館大ホールで行い、退職教授のプロフィールと最終講義要旨を顔写真付きで冊子として配布するというスタイルに変りました。
今年はいわゆる団塊の世代の先生方がご退職になるので、昨年すでに退職されてご事情により今年になった1名の方を加えて10名の先生方が2日にわたって最終講義を行われました。
中でも加齢医学研究所の仲村春和先生は、私にとっては発生生物学の研究分野で大学院生の頃から存じ上げていたので、仙台に異動するのに仲村先生がすでに東北大学にいらしたことは、大きな心の支えでした。
仲村先生は沖縄がまだ返還前の頃、国費留学生として、里見現総長とともに日本の大学に進学された方です。
京都大学、京都府立医科大学、広島大学を経て同府立大学教授になられた後に、平成6年から東北大学に着任されました。
平成13年からは生命科学研究科の設立に際して、本籍はそちらに移られましたが、研究室は同じ加齢研の中に残されました。
仲村先生の最終講義では、御留学先であったパリ郊外の研究所のニワトリ胚のモザイク画など、私もニコル・ルドワラン先生を訪ねて伺ったことがあって、とても懐かしく思いました。
仲村先生は、ル・ルドワラン先生の元で「一寸法師の刀」を用いたニワトリとウズラの「キメラ」技術を習得されたのですが、中脳の発生に関すし為された一連の実験発生学的ご研究は、まさに真骨頂といえるものでした。
とくに、「電気穿孔法」を用いてニワトリ胚での遺伝子操作法を確立されたのは約15年ほど前のことですが、この技術は現在、世界中で使われており、分子レベルの神経発生学を大いに進展させた仲村先生のご功績は非常に大きいと言えます。

最終講義の最後に、学生さん等からの花束贈呈があるのですが、学内の発生生物学のインターラボミーティングでご一緒しているという関係から、うちの大学院生が栄誉ある花束贈呈係を務めさせて頂きました。
彼女にとっても思い出深いものであったことと思います。
2日間の最終講義シリーズの後、艮陵同窓会の主催により退職記念式と懇親会が開催されました。
こちらには、仲村先生の奥様もご列席になり、同門からのお祝いのスピーチとして舟橋淳一先生から心のこもった暖かいお話が披露されました。
とくに、この後3月7日に開催予定の東北大学脳センター主催シンポジウム「発生・発達・機能」に、余裕を見込んで多数の先生方にご講演をお願いしたところ、ほとんどお断りになった方がおられれず、オーガナイザーとしては嬉しい悲鳴で、やむなくお一人ずつの持ち時間が20分程度になってしまったことなどは、仲村先生のご人徳だと本当に感じ入りました。

仲村先生は4月からは、すでに6年ほど務められている日本発生生物学会の国際誌Development Growth & Differentiationの編集主幹として、加齢研の中にオフィスを構えられるとのことです。
これまで、発生生物学が実験発生学であった時代から分子生物学が主流になる間、いくつかのブレイク・スルーをしながら、とてもワクワクする時代を過ごさせて頂きました。これからは、DGD編集長として、ブレイク・スルーを見届けたいと思います。(最終講義の言葉より)
【参考リンク】
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Nicol Le Douarin著(仲村春和、勝部憲一訳):キメラ・クローン・遺伝子―生命の発生・進化をめぐる研究の歴史
最終講義の動画(追って掲載されたらリンクします)