ファイルの増殖

コンピュータを使って文字を書き、書類を作るようになったのはちょうど大学院の頃になる。
大学時代はまだレポートを手書きしていたのだから、数年の間での大きな変化だ。

一番最初に使ったのはNECのパソコンで、現存している「一太郎」というソフトを使っていた。
親はいわゆる「ワープロ」専用機を使っていたが、こちらには手を出したことはない。
やがて教室に入ってきた大学院生N君がMacintoshの確かSEというシリーズを買ってきた。
当時のMacは高いし(これは今でも)日本語変換もやたら遅くて本当に使い物にならなかったが、お絵描きソフトの性能は良くて、横目でいいなあ・・・と眺めていた。
やがて自分でもMacintoshを使い始めるようになったのだが、まだメガの世界に届くか届かないかだった。
気が付くと、新しい機種が出るたびにメモリは多く、CPUは速くなり、フレンドリーで欠かせない「道具」になってきた。
自宅のコンピュータはG4だが、デュアル1GHzのプロセッサと1.5GBのメモリを積んでいて、これで不自由することはまずない。
コンピュータを買い換えるときに、前の機種のHDDの情報はすべて次の機種にコピーして、まださらにメモリは使い切れないほどであることが普通。
そういえば、「壊れる前に新しい機種に買い換える」という贅沢な機械の使い方はコンピュータで初めて知った(その次に携帯電話だった)。

さて、これだけメモリに余裕があると、書類のファイルの作り方が違ってきた。
以前なら「そのまま保存」していたものを、毎日新しく更新するごとに「名前を付けて保存」している(うちの流儀は050918のように日付を入れるというもの)。
そうやってファイルを増殖させておくのが、いざというときに安心であるということを学んだのだ。
さらに、例えば学生と論文原稿のファイルをやりとりするとき、私は自分が加筆訂正したファイルを、新たにOsという文字を加えたファイル名を付けて保存し、それをメールに添付して学生に送る。
つまり、私のコンピュータと学生のコンピュータに同じファイルが2つ残ることになる。
このようにファイルを増殖させておくと、これがバックアップとなり何かと便利。
さらに学生にはこまめにバックアップを取るように言ってある。
ちょうど生き物の生殖戦略に似ている。

そういえば、この20年のコンピュータの進化のうち、ソフトの進化というものも誠に生物的だなあと思う。
すでにあるソフトのかなりの部分を利用し、さらに付加的に新しい機能を付け加えていく(私はソフトの中身はまったく分からないが、外から眺めているとそのように見える)。
そうすると、ほとんど使われなくなったような機能がまだ残っていたり、あるいはプロセスとしては遠回りになってしまうようなやり方でも歴史を引きずっていたりすることになる。
もし、コンピュータのメモリが増えないというような事態が生じたら、新たに開発してやたら重たいソフトは生き残れなかっただろうが、幸いそういうことなくハードの性能が上がっていくために、ソフトはどんどん重くなる。
また、独占禁止法に触れるくらいの占有率を占めるようなソフトも出てくる始末。
それが使いやすかったら問題ないのだが・・・

さて、ファイルを増殖させた場合の問題点は、目的のファイルを後から探すときにどうやって素早く見つけるかということなのだが、私は(Macintosh OS10の場合)「表示」を「リスト」にし、更新履歴順(新しいものを上)に並べるというやり方を推奨している。
これは野口大先生の『「超」整理法』を応用したもので、「書類を封筒に入れて日付順にしておくと一番速く捜し物が見つかる」というのをファイルにも当てはめている。
大脳生理学的に、直感的に把握できる数は7までで(だから1週間は7日だという説あり)、あるいは視覚的には20くらいまでなんとかなるらしいが、それ以上数の増えたファイルはデスクトップにアイコンで並べていては探すのに時間がかかってしまう。
たいてい、一日に20くらいファイルが増殖するのだが、その日のうちはフォルダにも入れずにただ「書類」の大きなフォルダに放り込んである。
その日の夕方か翌日の朝に、それをいくつかのフォルダに片付ける。
各フォルダも勿論日付順にリストされているので、最近使った書類か、何月頃のものか、という記憶でかなり瞬間的に検索できる。
フォルダの数も一度に見えるのが20を超えるとややこしいので、階層性を持たせることは必要不可欠であるが、あまり整理する必要がないものはそのままにしてある。

「カラム」表示は階層が視覚化され一見便利そうに見えるが、各カラムの中が「名前順」でしかソートされないことが不満であまり使っていない。
また「検索ソフト」を用いて「キーワード」を入れても検索は可能だが、たいていファイル名などは忘れてしまうし、コンピュータは律儀だから、すべて検索し終わるまでずっと動いて、それからようやく「X個のファイルが見つかりました」とお知らせしてくれるのだが、私にはこれがまだるっこしい。
今のところ日付順になっている私の脳のメモリも使う検索法の方がずっと速いようだ。
by osumi1128 | 2005-09-18 21:30

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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