脳のはたらき

オフィスの机の上を1時間ほど片付けて、机の面が50%見える程度に回復した。
まだまだかかりそうだが、サイトビジットまでになんとかしないと・・・

さて、先日のブログ「ヒトとロボットの境」に対しては(珍しく)いくつかコメントを頂きました。
また、以下のブログに関連記事が書かれています。

http://d.hatena.ne.jp/roadman2005/20050920

・・・で、後でまた話がここ<異常から正常を知る?>に戻るのですが、とりあえず21日朝に書いていたものを載せます。

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念のために早めに行こうと思ったら1時間半も前に着いてしまい、まだ会場の有楽町朝日ホールには誰も人がいなかった。
仕方ないなと思ってマリオンのビルの1階に戻って、さあ、どこか喫茶店はないかと思って歩き出す。
長年の習慣で向かう方向は数寄屋橋側、ソニープラザのある交差点で左に折れてみたが、西銀座デパートはまだ開いていないし、渡って1ブロックエリアにもスタバはない。
銀座の四丁目あたりなら犬も歩けばスタバに当たるだろうに、何故ここには無いのか?と心の中で悪態を付きつつ、季節毎に衣裳が替わるペコちゃんの人形がある不二家のビルの、その地下にある「牛すき焼きバーガー始めました」という宣伝のかかったロッテリアに入る。
正確な名称は「半熟タマゴの牛すき焼きバーガー」で290円。
もちろんこれは食せず、アイスコーヒーのみオーダー。

高校時代にはまだスタバがなかったので、マクドナルドとロッテリアには通い詰めた。
といっても、コーラとポテトだけで数時間粘って、友人たちとコントラクトブリッジをするか、ひとり試験勉強するかなので、決して感謝状をもらうことはできない。
私の場合、ざわめいている店内の方がかえって集中できる。
「音」が「ドレミファ」に変換されてしまうので、友人たちのように音楽を聴きながら本を読んだりすることができないのが長らく不思議だったが、これは小学校時代に通った音楽教室で、先生が弾くピアノのメロディーや和音を楽譜に書き取る(その際、音が一旦コトバに変換される)トレーニングをしたためだ。
おそらくfMRIを取れば、モーツァルトのソナタを聴きながら聴覚野とともに言語野が活動しているのだろう。
視覚情報からの言語処理のタスクとかちあってしまうのだ。

さて、この数寄屋橋のロッテリアではピアノ曲に鳥の鳴き声が混じった有線が流れているが、鳥の声のせいか、この程度の文章をタイプするにはさほど困らない。
これはまた不思議なことだ。
高周波帯の音には人をリラックスさせる効果があるという話を聞いたことがあるが、不規則でゆらぎのある鳥の鳴き声が、聞き覚えのあるイージーリスニング系のピアノ曲と一緒になったときに私の脳がどんな風に活動しているのか見てみたい。

さて、では30分前くらいなので出かけてみよう。
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・・・という原稿を書いてからシンポジウムに臨んだのだが、最後の演者の多賀厳太郎さんの「乳児における発達脳科学研究」が興味深かった。

こういう未開拓分野を切り開くという学問はさぞかし面白いだろう。
今までにないイメージング技術を取り入れながら(近赤外光トポグラフィーによる測定が乳児の脳の発達にまったく影響がないかどうかは未知だが)、知覚の発達などを調べていくのはチャレンジングだ。

とくに、生後間もない赤ちゃんの睡眠時には、音声刺激により聴覚野のある両側頭葉だけでなく、視覚野のある後頭葉も反応するらしい。
これは一種の「共感覚」だと捉えられるが、要するに最初は脳の反応がglobalであるのが、発達とともにspecificになっていくことによる、かなり一般化できる現象だと多賀さんは考えている。
ミエリン化(髄鞘化)との関連はどうなのか、今度聞いてみたい。

私の場合の、音楽(とくにきちんと音階化されたピアノやバイオリンの音)によって言語野が刺激される(私自身はイメージングしていないけど、絶対音感のある人で見るとそうらしい)のは、むしろ大分たってからトレーニングによって連関してしまうようになったから、乳児のナイーブな共感覚とは違うものだろう。

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さてここからがいよいよ今日の本題なのですが、この発表で見たデータが、エラーバーがやたら大きくて、「これで差がある、なんてウチの業界では絶対に通らない!」というようなものだったんですね。
一般市民向けの講演会だから許されるということもないだろうし、もうちょっと厳密にサイエンスしてほしいなあと思ったのですが・・・

でも、明らかにテーマは魅力的だし、『脳と身体の動的デザインー運動・知覚の非線形力学と発達』(金子書房)なんてタイトルは、心理学系の人からも知能ロボティクスの人たちからも受け入れられやすいキーワードが含まれている。
同じキーワードで検索して引っかかってきた「認知発達理論分科会第16階例会」の発表の1つ京都大学中本敬子氏の発表内容によれば、「乳児の歩行が一旦退行現象を見せるなどのU字型行動」は「脳の変化だけでは説明できず」「生体力学的な文脈の重要性」が大事で、「非神経的変化が訓練により歩行を維持できる理由」であるという引用がなされている。
あたかも脳や神経は重要でないような捉え方だ。
さらに思ったのは、世の中には「遺伝子は嫌い」という人種がいるのではないかということだ。
ワトソン・クリックが発見したことなど無視しても構わないと思う人は世の中に案外多くて、そういう人たちが徒党を組むと分子生物学者は圧倒的に不利。
やっぱり高校の教科書からDNAが抜け落ちたのは問題だと思う。
(DNAを教えなくても良い、と思う人たちが決めちゃったのだから仕方ないが)
いやいっそ義務教育として中学の教科書に盛り込むべきかも、というのは自分側にバイアスかかりすぎているだろうか。
by osumi1128 | 2005-09-23 16:37

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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