もういちどプライス・コレクションを観に市博へ

今年のGWは前半、後半に分かれていましたが、前半最後の本日、もういちど若冲(その他)に会いに仙台市博物館に行ってきました。
入れ替えがあると聞いていたこともあり、前回、内覧会で駆け足で観たものと違う作品を観ることができて何より。

撮影禁止で展示品の画像は撮っていませんので、雰囲気は下記、フクヘンさんのブログをご参照あれ。
「若冲が来てくれました―プライスコレクション 江戸絵画の美と生命―」仙台市博物館

今回の気に入った作品の感想を備忘録として。
子ども向きのタイトルも付けられているのは「子どもたちに観てほしい」と願ったプライスご夫妻の意向が叶ったものです。

【27満開の梅の花/紅白梅図屏風】
作者不詳のこの六曲一双の大きな屏風図は、一面が紅梅白梅で埋め尽くされ、ところどころに短冊が描かれているのですが、梅の花の描かれ方は近くで観るととても3Dなのです。
モニタや印刷した写真では、そうういうところまではわかりません。
この絵を前にしながら宴会をしたら楽しそう、と思いました。

【34秋の草花/秋草図】
表装にも草花が描かれた「描表装」になっている鈴木守一のお軸です。
秋草と虫が配されているのですが、空間の取り方が絶妙。
そういえば、表装というのは、素材やスタイルを含めて日本で過剰ともいえるくらいに発達した訳ですが、現代では「プリクラ」にその名残があるという指摘は、思わず膝を打つものでした。

【78オニの〈しゅてんどうじ〉を退治するものがたり/酒呑童子図屏風】
こちらも六曲一双の屏風図で作者は不肖。
物語のシーンがいくつか描かれて、時間の推移が1枚の絵の構図の中に描かれているというのは、日本ならではのスタイルです。
ものすごく贅沢に金泥が使われており、その部分も3Dに塗り込められているのが素晴らしい。
退治されてしまう鬼の描かれ方の軽味が面白いです。

【92花や鳥、人や魚/課長人物図屏風】
若冲の筆による六曲一双の水墨屏風。
観た瞬間に「ピカソみたい!」と感じました。
とても洒脱な画風は天才だなぁと思います。
内覧会のときには、ちょうどこちらの代わりに「ツルさまざま/鶴図屏風」の六曲一双があり、同じような印象でした。

【20クリの木であそぶ手長ザル/栗樹猿猴図屏風】
二曲一隻の水墨画で作者は不肖。
こういうものをコレクションするプライスさんが素敵です。
こちらも空間の扱いがすっきりとしていて、ユーモラスな猿の顔や必要以上に長い手の雰囲気と絶妙のバランス。
たいへん不肖なことに、この手長ザルを見て連想したのは「殺せんせー」でした(苦笑)。

【100花も木も動物もみんな生きている/鳥獣花木図屏風】
若冲がもっとも有名になった六曲一双の屏風図です。
いわゆる「描目桝」というモザイクのような描き方なのですが、その桝の数は八万六千もあるとのこと。
私は、この気の遠くなるような作業を黙々とやり遂げた若冲のエネルギーを分けてもらいたいと思って、再度足を運んだようなものです。
釈迦涅槃図にたくさんの動物が集まって来るものがありますが、プライスさんは何よりもこの図を東北地方の皆さんに見て欲しいと願ったのでした。


図録の冒頭にプライスさんご夫妻および監修を務められた辻惟雄先生のインタビュー記事が掲載されており、今回のプライス・コレクションの東北三都市巡回展が企画された経緯が書かれています。
2011年の3月11日、TV Japanで地震と津波の報道を見て、自分たちも何かをしたいと思っていた頃、瓦礫の風景の中に美しい梅の花がテレビの画面に出てきたことがきっかけと悦子・プライスさんは語ります。
たんにお金を募金するのではなく、「美術品を東北に持っていきたい。とくに若冲の〈鳥獣花木図屏風〉を持って行きたい」とジョー・プライスさんに伝えて、それをすぐさま実行しようと思ったのでした。

相談された先が辻惟雄先生
これまでもプライス・コレクションの監修を務めておられた日本美術の専門家で、MIHO MUSEUMの館長、実は、東北大学にもお勤めになった方です。
また、日本経済新聞社の伊藤圭子さんも展覧会の実施に大きな力となられました。
ジョーさんにとっては、震災後に東北地方の方々が「食べ物もない、薬もないようなときに、よく暴動」を起こさずに株を上げたということも、もう一度、コレクションを里帰りさせても良いと思った理由の一つでした。

以下、悦子さんの言葉を引用します。
色と力強さ。こんな状態でも花が咲くのだという、それにすごく感動したわけです。東北の人も同じような色彩を見られたら同じような気持ちになれるのではないかというのがまずはじめで、もしすべては無理でも〈鳥獣花木図屏風〉だけでも持って帰ろうと思ったのです。というのは、私は震災後、もう心のよりどころがなくて、あの屏風を観ると、なにかお祈りができるような感じがしました。本当に不思議な屏風です。だから東北の人にあの一点だけでも見せてあげたいと思った。

「被災地というのは、いまだに〈色〉が無いのです」というのは、まさに、行きつけのギャラリーの方からも伺った言葉でした。
2年目の春を迎えて、震災復興はいよいよこれからが本番なのだと思います。

もういちどプライス・コレクションを観に市博へ_d0028322_21142191.jpgちなみに、本当は入場料すべて無料にしたかったそうなのですが、とりあえず「19歳未満が無料」です。
また、東北大学など指定の学校の教職員・学生の方は、市博や県美など、入場料(特別展も含め)半額ですよ!


ちなみに、市博の常設展が、いつ新しくなったのかうっかりしていました。
展示自体がリニューアルされてモダンになったこともさることながら、説明も日英中韓で書かれているので、これだったら外国人ゲストを絶対に連れて行きます!

【リンクまとめ】
展覧会公式サイト
仙台市博物館
フクヘンさんの関連ブログ
※内覧会のときの画像をアップしていなかったので、後で挙げます。
by osumi1128 | 2013-04-29 21:18 | アート | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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