『県庁おもてなし課』を読んで考えるイノベーション

『県庁おもてなし課』を読んで考えるイノベーション_d0028322_6593662.jpg映画の『県庁おもてなし課』がまもなく公開されるというので、そういえばまだ読んでいなかった有川浩の原著を文庫本で読みました。
県庁おもてなし課(有川浩著、角川文庫)

小説はフィクションですが、有川浩の出身地である高知県には、本当に県庁に「おもてなし課」が存在します。
この名前のインパクトは絶大ですね。
小説では、にもかかわらずお役所仕事から抜けていない同課が、どのように変わっていくのかをストーリーとしつつ、愛すべき登場人物たちの日々の営みが描かれます。
(このあたり、大学も似たような縦割り構造だったり、という感想も多々あるのですが、それは置いておいて……)
たまたま実家に行った折に、朝のNHKの番組で観た有川浩氏は、「普通のことを普通にこなしていく普通の人々を描きたい」という趣旨の発言をしていましたが、本書の設定もまさにそのとおりです。

ところで、折り込まれたエピソードの中に「道の駅」の話が出てきます。
車を利用されない方にはピンと来ないかもしれないので、一応、Wiki先生の説明を貼り付けておきます。
道の駅(みちのえき)は、国土交通省(制度開始時は建設省)により登録された、休憩施設と地域振興施設が一体となった道路施設。道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の人々のための「情報発信機能」、道の駅を核としてその地域の町同士が連携する「地域の連携機能」という3つの機能を併せ持つ。2013年4月1日現在、全国に1004箇所ある。

このスタイルの施設が造られ始めたのは1990年代はじめで、1993年に建設省(当時)が登録制度を開始したようですが、第一号の103箇所から、今やその10倍もの数ができているということは、日本が車社会として成熟してきたこととともに、この「仕組」が機能していることを意味しています。

道の駅のポイントは、どこへ行っても平均レベルの綺麗なトイレがあり(←ここ重要!)、世代を超えて楽しめる場所という「共通する安心感」(←ここも大事! 世界どこに行ってもスタバに行けばいつものカフェ・ラテがある、というような感覚)に加えて、それぞれの土地ならではの「独自性・意外性」がある(←ここ、ドパミン分泌でより強く記憶が刷り込まれる、たぶんww)ということでしょうか。
地元の特産品など、生産者の名前がラベルに表示されているものも多く、あるいは手作りのおまんじゅうなども地域密着の面白さがあります。
『県庁おもてなし課』で知ったのですが、そういう「手作りの商品販売」は、一種の「バザー」のようなものであって、出店者にとっては「利益が出るかどうか」ということとは別の軸の価値がある、ということでした。
自分の作ったものが売れると嬉しい、という気持ちや、それを仲間と共有する連帯感は、単に施設という「ハコ」を造った以上の効果を生み出している訳で、そのことが「道の駅」が機能し、広がってきた根源なのでしょう。

「イノベーション」とは「一般には新しい技術の発明と誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化を齎す自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する(Wikipediaより)」訳ですが、つまり、「道の駅」は日本の誇るべきイノベーションと言えるということですね。

その他、大学で広報に携わる身としても、いろいろ参考になることがある本書でした。
(高知県庁のおもてなし課HPに本書がPRされていないことなども……(ry)
by osumi1128 | 2013-05-07 07:42 | 書評

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