『なぜ理系に進む女性は少ないのか? トップ研究者による15の論争』上梓しました!

d0028322_2194347.jpgいろいろな思いが詰まった拙翻訳本がこのたび西村書店さんから上梓されました。
原著は『Why aren't more women in science?』というタイトルですが、邦題は『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』ということになりました。
『トップ研究者による15の論争』という副題が付いています。

男女で生まれつきの能力差があるのか?
米ハーバード大学長サマーズの発言をきっかけにした論争に対し、欧米のトップクラスの研究者が見解を展開!
数学のノーベル賞 “フィールズ賞”の受賞者に女性はまだいない


なかなか過激な(笑)言葉が帯に並んでいますが、中身はどれもevidence-basedな論説です。
認知科学、発達心理学、行動神経内分泌学などの専門家が、それぞれの立場で「なぜ科学の世界に女性がもっといないのか?」について論じています。

私自身の軸足は生物学なので、そもそもゲノムレベルで男女に0.3%の差異があることが折込済みですが「差異」が「差別」に繋がることは「多様性」の理解が足りないのだと思います。
例えば、同性の他人同士であれば0.1%のゲノムの差異があり、これが一人ひとりの個性を生み出すことに繋がります。
もちろん、私達の形質(カタチも機能も)がすべてゲノムで決まる訳ではありません。
育ち方、生き方、心のありようは、最終的に人間の行動や成し遂げることに大きく影響します。

本書の中の興味深いと思ったエピソードは、女子生徒が数学の試験をする前に「有名な数学者には天賦の才能がある」と教わるか「天才数学者も非常に努力して成功した」というエピソードを聞くかによって、成績が異なり、前者よりも後者の方が高いスコアを取るという検証です。
あるいは、解答用紙に名前を書き込むか無記名かによっても、自分に対する「ジェンダー・ラベル」に意識が向くかどうかが変わり、それによって試験の結果が変わるという研究結果もあるとのこと。

人は「天賦の才」を好むものですが、「才能は与えられたものである」と思い込むと、ちょっとした失敗でも「才能が無いからだ」と捉えることになり、「(例えば)理系には向いていない」という思い込みに繋がっていくというのです。
「努力によって鍛えられる」と信じる生徒は、失敗にもめげず伸びていくということを、教育の現場に関わる立場の者はよく認識しておくべきと思いました。

また、女性は職業選択の際に、男性より「社会の役に立つ」かどうかを重視する人が多いので、理系に進学し、職業に就く場合にも、多様な「社会への役に立ち方」があるということを、なるべく若いうちに伝えることも大事です。
その意味で、いろいろなキャリアのロールモデルが必要なのだと思います。

男女の能力はどのように異なるのか・違わないのかについては、ここで書いてしまうとネタバレなので避けますが、本書ではとにかく、論文から引用されたグラフなど含めて、多数のデータとその出典が載っています。
是非、それを見ていただいて、無意識のバイアスに気づくことが大事でしょう。
そして、日本でもこのような無意識のバイアスについての検証が必要だと思います。

本書は、元東北大学サイエンス・エンジェルの方々や、その指導をして下さっていた久利美和先生(現東北大学災害国際研究所・講師)に大変にお世話になりました。
また、私の至らないところを叱咤激励して助けて下さった西村書店編集部の皆様、とくに中畑さんには本当に感謝しています。
そして、本書を見出し、翻訳の機会を与えて下さった西村安曇さん、震災により一時は出版できないかと思いましたが、東北大学女子学生入学百周年の今年に出版までこぎつけて下さった御恩は一生忘れません。

リケジョを目指す方、リケジョを応援して下さる方に、是非、読んで頂けたらと願っています!

『なぜ理系に進む女性は少ないのか? トップ研究者による15の論争』(S.J.セシ、W.M.ウィリアムス編、大隅典子訳、西村書店)
Commented by マタタビ at 2013-06-16 01:25 x
面白そうな本ですね。読んでみます。

単純に、活躍していて憧れる理系女子の露出が増えると良い気もします。一般人が科学に興味持たないのって、科学従事者のせいだと思いますし。

by osumi1128 | 2013-06-07 21:40 | お知らせ | Comments(1)

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