Neuro2013関係:科学者にとっての科学コミュニケーション

神経科学学会+神経化学会+神経回路学会合同のNeuro2013という学会が、国際生物学的精神医学会と直列に続くかたちで開催されており、昨日はサテライト・シンポジウムをオーガナイズしたのですが、本日はお昼の教育講演のセッションの1つをチェアしました。

講演を行ったのは、Dr. I-Han ChouというNatureのSenior Editorの方です。
タイトルは「Communication of science in digital age」ということで、研究者にとっての科学コミュニケーションにはどのようなやり方があるか、ということなのですが、今の時代は(ご両親は台湾、本人は米国で育って現在は編集者をしている彼女にとっては)いろいろなやり方がありますね、ということで、従来の科学コミュニケーションでは、以下のようなものがもっぱらでした。
Publish papers(論文を出す)
Discuss with lab mates(研究室の中で議論する)
Discuss at conference(学会等に言って議論する)

ところが、現在では、上記に「加えて」以下のようなやり方がありえます。
Discuss at webinars, Google+(ウェブセミナーやGoogle+で議論する)
Scientist blog(ブログに科学の話題を書く)
Social media(FacebookやTwitterなどで科学について議論する)
Prepublication access(論文出版前に原稿をweb上に上げる)
Postpublication review(論文出版後に査読する)
Reference sharing(出版された論文をまとめたり、それをwebに上げる)
Data sharing(データそものもを共有できるようにwebに上げる)

そう、つまり、これまでのように「雑誌」や「マスメディア」という手段に頼らなくても、自分で広く発信することが可能であり、またそれを読んだ人たちが、科学者であれ、そうでない方であれ、自由に意見を述べたり、批判したり可能な時代になったということです。

Dr. Chouは座長をする私が、いったいどんな人間なのか、当然ながらGoogle検索をかける訳ですね。
そうすると、ローマ字で入力すると一番上に上がってくるのはTwitterアカウントのsendaitribueのようです。
なので、「今朝すでに、このセミナーのことをtweetしていたようですが」とDr. Chouからmentionされましたww
当然ながら、私がどんな話題について発言したり、リツイートしているのかも公開されていますから、およそ、表面的には私がどのような人間なのかわかる訳です。
残念ながら、英語ブログのSendai Tribuneは、Noriko Osumiというタームのタグが付いていないので、検索上上には挙がってきませんね。
日本語より更新頻度が低いですし……。

彼女は「ブログは誰でもできる科学コミュニケーションです」と主張しています。
誰かの論文について批評するのでも構わないし、science policyについての意見でも良いでしょう。
あるいは、何か新しいテクニックについて取り上げることも意味がありますね。
神経科学のグループ・ブログに関しては、Stanford, UCSD, UCLA, Rockfeller Uなどで、大学院生たちによるものが立ち上がっているとのことでした。

日本のweb情報の扱いについては、どうも「2ちゃんねる」に代表されるような、匿名による書き込みの印象が強く、「アヤシイ情報」だと思われたり、「ブログ書いている暇があったら、実験すべき」というボスもいるかもしれず、「mixi」や「Twitter」でも実名は使わない風潮があり、ようやくFacebookの導入で実名の時代に入ったかな、という感じなので、個人が自分の立場で情報発信するための前提条件が他の国とは違うようにも思います。

でも、Dr. Chouに言わせれば、「就職のときに、採用側があなたの名前を検索して、何も引っかからなかったら、それは存在しないとのと同じでしょう」ということなのです。

なので、自分のCVや業績をResearchgateやLinkedInなどにまとめておくことが大事、それも一つの科学コミュニケーションだ、とDr. Chouは主張しています。

セッション後に、「いやー、おおすみさん、彼女の言うことはわかるけど、そんな時間は無いよ……」と仰った先生もおられましたし、そのご意見は比較的上の年代では多いと思います。
そういうestablishされた先生は、まぁ、必要ないかもしれませんが、私自身は若い方には「自分の業績をResearchmap(日本版で、さらに日本語の業績も簡単に入力できる)などにまとめておいた方が良いですよ」とお勧めしています。

科学コミュニケーション寄りの話に戻って、思い出すことは、数年前にとある新聞社の方とお話した際に、「もっと科学記事を紙面で扱ってもらえませんか?」と伺ったら、「新聞は<悪を暴く>のが本業です。科学者は自分で発信すれば良いでしょう」と言われたのですね……。
その当時、すでにブログを書き始めた頃だったのですが、「そうか、限られた紙面を争うのではなく、自分で大事だと思うことは、自分で伝えればよいのだ」と気付かされた瞬間でした。

そういう意味で、今回、大会前日に今回の発表に関するプレスリリースの記者会見を行い、その内容を大学のHPに掲載して頂きました。
マウスの超音波発声に対する遺伝および環境要因の相互作用: 父親の加齢や体外受精が自閉症のリスクとなるメカニズム解明への手がかり
追って、さらに詳しい解説記事を載せるつもりです。
ちなみに、Nature的には、open scienceの観点から出版以前に原稿を掲載することはOKとのことです。

なお、彼女のキャリアは、学部はハーバードで心理学、PhDはMITで認知科学、ポスドクはUCSFでシステム生理学を修めた後に、フリーのサイエンス・ライターを経て、Nature Neuroscience編集部、そして現在はNatureの日本支局勤務というキャリアパスです。
セッション後に若い方が質問に来ていたときに「広く科学を知ったり扱いたかったから、編集者になりたかった」と話していました。
是非、次はそういう観点からもセミナーをお願いしたいと思いました。
by osumi1128 | 2013-06-21 00:08 | 科学 コミュニケーション

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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