東北大学百周年記念シンポジウム開催報告

かねてより告知していましたように、8月8日に東北大学女子学生入学百周年記念シンポジウムおよびプレイベントが無事に開催されました。
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230名くらいの参加だったかと思いますが、80名を超える方々からアンケートの回答を頂き、それをざっと見ましたが「予想以上に興味深かった!」というご意見が多かったのが印象的です。
動員をかけるほどではなかったのですが、部局長クラス(ほぼ男性)の方々には多数ご出席頂き、おそらく「役職だから」参加された方もおられたことと拝察するのですが、昨日、別の折にお目にかかった際にも「参加してとても役に立った」と言われたのは、少し、普通のこの手の「男女共同参画イベント」とは異なる印象をお持ちになったのだと思います。
「盛りだくさんだったのに飽きなかった」「あっという間に終了時間となった」というようなコメントもありました。

元米国NSF長官のRita Colwell先生(WPIプログラム委員会メンバーでもあり)や、英国ロイヤル・ソサエティのフェローであるVeronica van Heyningen先生、ロレアルーユネスコ女性科学賞を受賞された黒田玲子先生(本学の経営協議会メンバーでもあります)などの重鎮ともいえる女性リーダーからの力強いお話もさることながら、お招きした男性陣がはっきりとした意見を述べられる方々だったことが一番の原因だったかもしれません。
その男性とは、ご来賓の黒川清先生、御講演頂いた向井万起男先生と元東北大学で男性で初めての育児休暇取得者である高橋幸弘先生だったのですが、これらの3名の方々にはパネル討論にも参加して頂きました。

たぶんパネル討論がこれほど本音トークであったシンポジウムは、東北大学男女共同参画委員会主催で初めてだったかもしれません。
コーディネータは2007年の理系白書シンポジウムでもお世話になった、毎日新聞科学環境部の副部長、元村有希子さん、パネリストは上記の男性陣3名に加え、WPI機構長の小谷元子先生(本ブログでは数学科のK先生として何度も登場♫)、御講演も頂いた本学理学卒業生の福島理恵子さん(日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011受賞)、そして、午前中に高校生とのグループトークを行った、東北大学サイエンス・エンジェルの高橋さやかさん。
どなたもキャラの立っているパネリストを、元村さんが見事な采配で仕切って下さって、総合司会の不手際により押せ押せだったシンポジウムが、それ以上に伸びないようにまとめて下さいました。
感謝!
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以下、私が印象に残ったそれぞれの参加者の言葉を取り上げます。
(ご講演等とパネル討論のご発言をミックスしています)

小谷先生:
常々言い続けているが、自宅でも研究できる数学は、むしろ女性に向いている。自分としては女性で不利であったというよりも、女性が少ないことによりチャンスをもらうこともあった。そのチャンスを活かせるかどうかは本人次第。最初の女子学生入学から100年経っても、まだこの程度というのは、もう待ったなしの段階。


黒川先生:
ジェンダー・バイアスやスティグマがあるが、実際には女性が経営陣に参画している企業の方が業績が良いというデータがある。女性が活用されにくいのは、同じ所でキャリアアップしていくという閉鎖的な日本社会自体の問題も。女性だけの問題ではない。世界の変化は加速している。時代に合ったストラテジーが必要。サッカーのように、皆それぞれのポジションで動いてゴールを狙うべき。皆の良いところを発揮できれば組織の強みになる。大学はこのような組織を作るのに本来一番有利なはず。


福島氏:
女性は職位が下のうちはチヤホヤされるが、上になるととたんに厳しくなる。その変化に付いていけないとドロップアウトする。能力を発揮できていないのは(若い)男性も同じ。最近、女性の方が元気と言われることがあるが、それは男性が縛られているから。自分の夫は、大学の助教職を辞めてポスドクになり、その後、大学の教授職を得た。「君が働いているからチャレンジできた」と言っている。これからは、理系文系という枠組み自体が古くなる。境界領域が伸びる。これからの世界を見た教育をしてほしい。


向井先生:
女性は正論を通す。それが素晴らしい。男性ばかりの組織の中では、正論が「そんな青臭いこと言って…」とネガティブに扱われて、組織論に流される傾向がある。自分の妻(宇宙飛行士の向井千秋さん)の方が人間が大きく、自分にとっては「磨き砂」。ダメな男の典型であるが、何を言われても受け入れるところは長所だと褒められる。これからの日本を変えるには教育改革が大事。もっと面白いこと(例えば相対性理論など)を小さい頃から教えてエリートを育てるべき。


高橋幸弘先生:
男性の育児休暇取得者だからと、こういう会に呼ばれること自体が異常。未だに育児休暇取得者の数はあまり増えていないようだ。育児休業は取ってみると(ほぼ)いいことづくめ。男性は女性に甘いところがあり、それに甘えてしまうと女性は伸びない。世界の変わる速度はどんどん早くなっている。自分の所属する組織の外も見ること。女性は世界と繋がるキーワードになる。


高橋さやかさん:
女子高校生たちは、とても柔軟な発想を持っていて、100年後の夢を語ってくれた。これまであまり意識したことがなかったが、今になって思うと、周囲には、男性が稼ぎ女性は家にいる、という意識の人が多いかもしれない。いずれは「リケジョ」が普通になり、「リケジョ」という言葉自体が無くなるのがよい。


向井先生の「正論」の話は、昨年、別の折に聞いた「上司に対してきっぱりとNOと言えるか」という話と附合するものですね。
岡野さんのランチョンセミナー&束村さんの講演@ランチタイムミニシンポジウム
また、黒川先生の「女性が意思決定機関に参画している企業の方が業績が良い」というのは、例えば、過日、書評として取り上げた『リーン・イン』にも書かれています。
拙ブログ:『リーン・イン』に学ぶリーダーシップ

今回のシンポジウムは、東北大学に初めて女子学生が入学したことのお祝いを目的として開催しましたが、本学の男女共同参画活動をこれまで率いてこられた辻村みよ子先生のご尽力に感謝を申し上げる節目でもありました。
最初の女子学生受け入れとしてのさきがけ、また国立大学の中でも先駆的に男女共同参画を進めてきたという二度目のさきがけ、そしてこのたび、三度目のさきがけに向けての船出とも言える日でした。
そのよりどころとして「東北大学男女共同参画行動指針」が里見総長から話されました。
行動指針の読み上げだけでなく、総長ご自身のコメントがあったことも何よりでした。

また、100年前に入学した3名の女子学生のうちの一人、黒田チカ先生のご遺品がこのたび東北大学に移管されることになり、その感謝状贈呈の式典も行われました。
黒田チカは生涯、独身を貫いたのですが、弟子筋の方を養子に取られ、その二人の息子さん、黒田光太郎先生@名大名誉教授・現名城大学と、黒田研二先生@関西大学がシンポジウムにご参加下さいました。
感謝状は総長から黒田光太郎先生に手渡され、黒田先生が簡単なスピーチをされましたが、この日、8月8日は、ちょうど体格検査の日、翌日から2日間の入試が行われたようです。
総長は「貴重な資料としてしっかりお預かりするとともに、多数の方に見て頂けるようにしたい」という感謝の言葉を述べられました。
今後、東北大学資料館の永田英明先生が中心となって、ご遺品の整理が進むものと思われます。

シンポジウム終了後に茶話会があり、乾杯のご発声をWPIプログラム・ディレクターである本学医学部卒業生の黒木登志夫先生にお願いしましたら「本当にソフトドリンクしか無いのですね」と驚かれましたが、その中締め前のスピーチで、Colwell先生が言われたことはとても重要です。
私はこの手の催しに何度も招かれたことがあり、その度に何も変わらないことにがっかりしてきました。ですが、今日はまったく違う印象を持ちました。東北大学は総長のリーダーシップのもとに、本当に改革にチャレンジするのだと信じています。その変わった後の姿を見たいと思います。


シンポジウムの翌日、Colwell先生はWPI-AIMRの視察、van Heyningen先生は東北メディカル・メガバンクの視察と東北医学会特別講演のスケジュールを終え、無事にご帰国されました。
お見送りはホテルで朝6:15にピックアップした後、タクシーで仙台空港に行く道すがら、「このあたりまで津波が来たのですよ」と説明しました。
人は忘れやすい生き物です。
今日は311後の3度目のLIGHT UP NIPPONの日でもありました。
by osumi1128 | 2013-08-11 21:05 | 東北大学 | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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