先端歯学スクール2013にて講演
2013年 09月 27日
「先端歯学スクール2013」という、歯学分野の選りすぐりの大学院生を集めて、研究発表、ディスカッションなどを行い、最後に受講証や優秀発表賞を授与する、という企画です。
1時間の教育講演枠を頂いたので、医科歯科時代からの研究テーマを中心に「神経堤細胞の魅力」というタイトルで、19世紀のHisによる記載から始めて最新データと今後の展望まで講演しましたが、いくつか若い方々へのメッセージを込めました。
その1:研究は楽しい!(大変な時期もあるけど……)
楽しいと思えることを仕事にできることは大きな喜びです。
毎日が楽しい訳ではありませんが、びっくりするデータ、予想外の結果などが出てくるとワクワクします。
その2:広い視野を持とう!(無駄な時間は何も無い)
これからの鍵は融合です。
そのためには広い分野の知識や人脈が必要です。
自分の専門と関係の無いと思う話も、いつか役に立つかもしれません。
その3:自分にタグをつけよう!
業界の中で自分の顔・名前に加えて専門分野、プロフェッショナルなスキル、系譜のタグが付くように、学会などに参加する際にセルフ・プロモーションしましょう。
「専門分野と得意なスキル」を覚えてもらうためには、ある程度最初は同じ路線に固めて研究発表を行って、自分の陣地を固めるのが良いと思います。
狭い分野であればより、その分野の若手トップになれるので有利とも言えます。
その4:最先端の研究を!
科学は過去成果の延長にあることを認識し、先人に学ぶことが大切です。
昔の論文にはヒントとなる宝がたくさん隠れています。
最先端は常に「エッジ」にあります。
最初の論文は認めてもらえないかもしれませんが、本当に大事なことであれば、いつかは世界の中心になります。
その5:歯科は医学の最先端
そもそも「入れ歯(義歯)」の歴史は眼鏡より古く、紀元前にまで遡ることができ、義歯は人類最古の人工臓器です。
先進国では、この数十年の間に虫歯はかなり予防できるようになり、その治療の質も良くなり、齢をとって歯を失う人の数も減りました。
(「齢」という漢字に「歯」が含まれることは象徴的です)
つまり、歴史的に見れば医学の中でもっとも進んだ分野であるとも言えるのです。
その結果、歯科医が余り気味とも言われていますが、それは、新しい分野を開拓していないからです。
上記とも関係しますが、もっと真剣に融合研究を進めるべきだと私は思います。
口腔状態と全身状態の関係を、もっとデータ・ドリブンに解析することにより、今までわからなかったことが見えてくるかもしれません。
歯科と神経科学・脳科学の融合も、本当に「歯を失わなければ認知症になりにくい」のか、では歯を失った場合には、どのように脳を刺激すればよいのか、などのテーマの展開もあります。
「顔認知」における顎口腔部の役割、言語機能との関係などもあるでしょう。
あるいは、特定の症候群(例えばダウン症候群など)が、なぜ特有の顔貌を呈するのかも、まったくわかっていません。
要は、既存の「歯学・歯科領域」から飛び出す勇気が必要なのだと思います。
そこには、まったく新しいフロンティアがあるのではないでしょうか?
……というような意図で、煽ってみました。
講演を聴いてくれた若い方々が、新しい分野にチャレンジしてくれることを祈っています♫