『進化医学 人の進化が生んだ疾患』

『進化医学 人の進化が生んだ疾患』_d0028322_16472379.jpg元京大総長、初代総合科学技術会議議員の井村裕夫先生から、昨年に上梓されたご高著『進化医学 人の進化が生んだ疾患』をご恵贈頂きました。
冒頭に掲げてあるのは、遺伝学者Theodosius Dobzhanskyの言葉。

"Nothing in biology makes sense except in the light of evolution."
(進化を考えない生物学には意味がない)

井村先生は「従来医学の領域では、進化学の視点はきわめて乏しかった」とし、「ダーウィン医学」というコンセプトが登場するのは1994年の『Why We Get Sick』(Randolph M Nesse & Goerge C. Williams著)や、『Evolutionary Medicine』(Mark Lappe著)が世に出てからと指摘されています。
これを受けて、井村先生はすでに2000年に『人はなぜ病気になるのかー進化医学の視点』を岩波書店から出されていますが、本書はその後の学問の進展を取り入れて、より体系的なものとなっています。
つまり、

ゲノム進化の理解なしには、生物学も医学も意味をなさない

と言うことができる時代になったということですね。

本書では、生命進化38億年の歴史の振り返りに始まり、人類への進化がどのような疾患に結びついたのか、感染と防御機構の共進化、栄養・エネルギー代謝と進化の関係、寿命の問題など、きわめて広い範囲を扱っていますが、個々の説明はとてもわかりやすく、納得のいくものです。
また、豊富な引用文献があり、読者が興味のある箇所を掘り下げることが可能です。

『進化医学 人の進化が生んだ疾患』_d0028322_16481495.jpg個人的には「進化ゲノム学」および「脳と心の進化と疾患」の章をもっとも興味深く読みました。
精神疾患発症と脂質代謝のことを指摘したDavid Horrobin博士の著書も取り上げられており、自分も興味深く読んだことを思い出しました。
これから、ゲノム情報やエピジェネティクスを取り入れた医学が進んで「先制医療」へと繋がる時代、生命科学、医学に興味のある方へ是非お薦めします!




【リンク】
『進化医学 人への進化が生んだ疾患(井村裕夫著)』
『天才と分裂病の進化論( デイヴィッド・ホロビン著)』
『日本の未来を拓く医療 ―治療医学から先制医療へ―』
by osumi1128 | 2013-09-28 16:56 | 書評 | Comments(0)

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