TWAS総会に出席しました(その1)

今回、地球の反対側(本当に三次元の点対称的)のブエノス・アイレスまで来たのは、TWAS The World Academy of Science for Developing Countries(元々は第三国科学アカデミー)という組織の年次総会にAssociate Fellow(後述)として出席する為です。
この組織は設立30周年、イタリア北部、スロヴェニアとの国境に接するトリエステというところに本拠地があり、低開発国における科学振興を推進することを目的としています。
活動資金の大部分は、イタリア政府ならびにスウェーデン政府からの基金であり、最近ではそれにくわえて中国からの資金も投入されています。

世界90カ国くらいから、推薦による会員が選ばれ、その数はFellowsが924名、Associate Fellowsが140名、合計1064名に上ります。
OECD加盟国はDeveloped countriesとみなされるので、日本からのmembersはAssociate Fellowsなのですが、長倉三郎先生、黒川清先生に次いで、このたび3人目のAssociate Fellowを拝命した次第(前のお二人があまりにも偉大で……汗)。
韓国は数年前にOECD加盟になったので、FellowからAssociate Fellowに代わることになったのが、けっこう微妙な感じです。
というのは、924名のFellowsの中で圧倒的数を誇るのが、今や中国とインドなのです。
Associate Fellowsは一つの国が1/5を超えないように、というルールがありますが、Fellowの方は推薦により業績ベースでselection committeesが選ぶので、繰り返していけば、どんどんそういう風になるでしょう。
ともあれ、これまでに参加した国際会議で、これほどまでに中印人口の多いものは初めてでした。
TWASの下部組織には、以下の5つがあります。
●TWAS Regional Office for East & Southeast Asia & Pacific(担当組織は中国科学アカデミー、北京@中国)
●TWAS Regional Office for SubーSaharan Africa(アフリカ科学アカデミー、ナイロビ@ケニア)
●TWAS Arab Regional Office(Bibliotheca Alexandrina, アレキサンドリア@エジプト)
●TWAS Regional Office for Central & South Asia (Jawaharial Nehru Centre for Advanced Scientific Research, バンガロール@インド)
●TWAS Regional Office for Latin America & The Caribbean(ブラジル科学アカデミー、リオデジャネイロ@ブラジル)

うーん、久しぶりに地理の勉強をした感じです。
普段、いかに狭い世界で生きていたのかを痛感しました……。

TWASの活動は、各種の賞を授与して、科学者をエンカレッジすること、各種のグラント・フェローシップの授与、各地域支部の活動、支部同士の連携、Public relationshipが中心です。
HPのトップはこんな感じ。
TWAS総会に出席しました(その1)_d0028322_137156.jpg

初日には、今期からPresidentに選ばれた中国のBai Chunli先生(Baiが姓ですね。英語的語順ならChunli, BAIです)の開会挨拶があり、年次総会としての予算決算報告や、活動報告(下記参照)、2013年の新メンバーの承認、各種TWAS関係の賞の授賞式が行われました(さっそくHPにアップされています)。
今回の開催地、アルゼンチンが科学分野で台頭しつつあるというアジった記事もありますね。
たしかに、この総会をどこで開催するのかは、かなり政治的にも重要な問題と思われ、昨年の開催は中国の天津、次回の開催は、まだ、ケニアとオマーンで協議中。
決まらなければ3つ目の候補として、TWAS本拠地のトリエステになるかもしれません。

TWAS総会に出席しました(その1)_d0028322_13493875.jpg

初日の午後、各国の行政関係からの基調講演があり、我が国は前文科省事務次官の森口泰孝様(現東京理科大学理事長特別補佐、文部科学省顧問)が登壇され、オリンピックのことを枕に、東日本大震災後の各国からのご支援への感謝にも触れつつ、サステナブルな環境、エネルギー問題、感染症のグローバル化などを挙げ、国策として科学技術の推進が重要であり、日本は現在、より開かれた国として世界各国と頭脳循環も行いたいという趣旨のお話をされました。
最後には、この週末から京都で開催されるSTSフォーラムのご紹介を。
他には、TWASのナンバー2、トリエステで実際を仕切っておられるExcecutive DirectorのRomain Murenziという方(アフリカ系の方ですが、イタリアンなスーツがとてもお洒落ww)、開催国であるアルゼンチンの科学技術生産大臣、南アフリカの科学技術大臣、メキシコの地域開発機構の副機構長、ウルグアイのUNESCOオフィス代表、アルゼンチンのインター・アメリカ開発銀行のイノベーション関係の方などが登壇されました。

やはり開発国での科学技術に対する関心では、ライフ系の場合、農業、感染症などが中心であり、ある意味とてもお金のかかる再生医療などは、とても手が出せないという印象を持ちました。
また、Fellowの人数は少ないのですが、科学技術政策関係の方や、社会学の方もいらっしゃいました。

TWAS総会に出席しました(その1)_d0028322_1323470.jpg1日目後半〜2日目には受賞講演が各種行われ、TWAS Prize 2012の生物学分野を受賞したProf. Ann-Shyun Chiangのハエ脳のコネクトームのお話は、数年前に東北大学脳科学グローバルCOEの若手ジョイントフォーラムを台湾で開催した折に基調講演として聴いたときから、さらにどんどん進んでいて圧巻でした。
(ハエの脳の中の神経回路を可視化した画像は台湾の科学院HPより拝借しています)

講演後に「ハエの脳の神経回路をすべて明らかにしたとして、次はどうされるのですか? ヒトの脳ははるかに多数のニューロンや、さらにその数倍のグリア細胞がありますよね?」とフロアから質問すると、「ヒトなど他の生き物へ進むのは大事なことです。でも私達は次は、脳と体の結合を明らかにしたい。つまり、丸ごとハエを理解する方向に進みたいと思います」というお答えでした。
彼の脳内にあるのは、ロボットやマシーンのイメージなのだと思います。
実際にトークの中でもVirtual Flyという言葉を使っておられましたね。
(私は、ハエよりも寿命も長いヒトの脳の中には、新たに細胞が生まれたり消えたり、もっとダイナミックなことが起きているので、違うイメージを持っていますが……)

2日目の最後に、2012年に選ばれた新メンバーで今回参加した者の紹介セレモニーがありました。
一人ひとり推薦理由が発表されて、Presidentから証明書が渡され記念撮影し、PresidentとSecretary Generalに握手して、壇上から下りてサイン・ブックに署名をするというものでした。
インドのFellowの女性は、やはりサリーをお召しになっていたので、ここは日本人としては、やはり着物を着るべきだったか、と思いましたが、出張直前までバタバタとしていたので諦めたのでした……。

日本とはちょうど時差が12時間なのですが、日本時間に合わせて仕事しているような感じです(苦笑)。
そろそろ寝ないと……。

【リンク集】
TWAS The World Academy of Science for Developing Countries
Ann Shyun Chiang先生のHPはこちら
第10回科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム
by osumi1128 | 2013-10-03 13:53 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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