高橋政代先生特別講義&会津学鳳高校にて講演

本日は朝1限目に理研CDBプロジェクト・リーダー高橋政代先生に医学部4年生相手の特別講義をお願い致しました。
京大医学部→眼科入局→大学院修了→ソーク研究所留学→京大助教授→発生再生研究所チームリーダーというご経歴で、iPS細胞を用いた網膜黄斑変性治療を世界に先駆けて行われているフロントランナーです。
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ソークのFred Gage研で神経幹細胞に関する研究を行なって、移植治療は本当に眼科疾患でもできるかもしれないと考えられ、帰国後にES細胞やiPS細胞を用いた基礎医学研究から実用化までを展開されていますが、今回、学部生相手に強調されていたことがいくつかありました。

iPS細胞を用いた細胞移植治療は、最先端治療法のいくつかの中の一つ

実際には、例えば細胞の代わりにチップを使った人工網膜の方が、細胞移植よりも一歩先を行っているとのこと。
この点、日本のメディアはiPS細胞治療に偏りすぎで宜しくないと苦言を言われていました。

細胞移植治療等は「失明」状態から「ロービジョン」に変えるものだが、実際には「ロービジョンケア」というリハビリを伴わなければ見えの改善にはならない。

ロービジョンとは、世界保健機関 (WHO) では、矯正眼鏡を装用しても「視力が0.05以上、0.3未満」の状態ですが、そのケア、つまり、視覚補助ツールや白杖をどのように使うかなども合わせて指導しなければ、移植してハイ終わり、というものではないということでした。
これは、眼科が外科から内科、遺伝カウンセリングや心のケアまで、眼や視力に関わることを包括的に扱っているため、よけいに感じられることなのでしょう。

最先端治療も20年の間には普通の治療になる。

例えば白内障手術も、当時は安全性などを疑問視する方はいた訳ですが、今や定着した治療法になっているように、iPS細胞移植も20年後には当たり前になっているでしょう、と政代先生は仰ってました。

講義の中で、MDで医療ベンチャーのCEOやCTOをされている方のご紹介があったので、終了後に学生さんが「そういうのに興味があるのですが、何年くらい臨床をしてからベンチャーを始められたのですか?」など質問してました。
授業をしたりお招きしたりしていつも思うことですが、講義室の中で一人でも質問してくれる学生さんがあれば、講義をした・して頂いた甲斐があるというものです。

政代先生のご主人の高橋淳先生は京大の脳外科出身で、現在は再生研の教授であり、やはりiPS細胞移植をパーキンソン病等に応用されつつあります。
お嬢様のお一人はサンディエゴにおられ、もうお一人が岩手大学とのこと。
子育て期も終わったところなので、政代先生にはますますのご活躍が期待されます!
政代先生、前日から遠くまでお運び頂きましてありがとうございました。
次回はぜひ、大人向けのセミナーにお呼びしたいと思います。

【追記】
なんとタイムリーなことに、高橋政代先生は、Nature誌が選ぶ2014年でもっとも重要な5人のうちの一人に選ばれました!
365 days: Nature's 10 Ten people who mattered this year.(この記事の一番最後の方のセクションに5人のうちトップに政代先生のお名前が! 引用しておきます)
Masayo Takahashi, RIKEN Center for Developmental Biology
Induced pluripotent stem cells could get their first test in the clinic. Using cells derived from patients, Takahashi plans to create sheets of retinal cells to treat macular degeneration, a common cause of blindness.

「来年の注目」iPS臨床の高橋氏 英科学誌 (日経新聞)
理研の高橋政代氏、ネイチャー誌選出・来年注目の1人に-iPS細胞臨床研究(日刊工業新聞12/19)
iPS臨床の高橋政代さんら=英科学誌「来年注目の5人」(時事ドットコム12/19)
関連記事:「出逢いの演出家」に徹して脳の発生を再現(Natureジャパン)
生命科学DOKIDOKI研究室 | この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?:第2回「私たちが種を巻いた網膜再生の研究をいまの中高生の世代に花開かせてほしい

この記事で思い出しましたが、政代さんも大学ではテニス部、その前にバスケット、ついでに言うと一人っ子、という共通項があります。
お生まれは大阪、わたしは母方祖母が船場なので関西クォーターww

*****
政代先生を仙台駅までお送りして、自分はその後、会津若松市の福島県立会津学鳳高等学校に出前授業に行きました。
郡山から磐越西線に乗ると、とたんに雪が多くなりました。
こちらもスーパー・サイエンス・ハイスクール認定校で、元女子高校で現在は中高一貫校なのは、アドバイザーをしている宮城県立古川黎明高校と似ていますね。
ちょうど今週からは冬休みに入ったとのことですが、今回、講演を聴いてもらったのは中学3年生全員と、高校2年生、3年生のSSHコース選択の皆さんでした。

今回、分生TED風講演の経験をもとに、スライド枚数を90分の講演に対して45枚に厳選して、なるべく語りを多くしてみました。
だいたい時間配分のペースがつかめたので、これからは市民向け&出前授業はこのスタイルで行きたいと思います。
by osumi1128 | 2013-12-18 20:38 | ロールモデル

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