東大からの発表を受けて【追記しました】

暮れも押し迫った一昨日の26日、東京大学から論文不正問題に関する記者発表がありました。
日本分子生物学会からは再三、「科学的な検証部分についての結果の早期開示」をお願いして参りましたので、今回、処分の問題とは切り離してそのことを発表されたことについては、関係論文が10年以上にわたって100本以上(調査されたのが165本とのこと)、関わる著者が200名にものぼるという膨大な調査から考えて、ひとまずは大きな一歩であると思われます。

東大からは理事長宛にメッセージが届きましたので、学会HPにさっそく掲載致しました。
『論文不正の疑いに関する調査(中間報告)の公表について』(東京大学)(2013.12.26)
理事会執行部からのコメントを転載しておきます。
東京大学より『論文不正の疑いに関する調査(中間報告)の公表について』(2013年12月26日付)を受理しましたので、ここに公開します。
日本分子生物学会はこれまで、関係者の懲罰とは切り離し、科学的な評価についての早期開示を東京大学に要望して参りました。調査対象が広範囲にわたることから、相当の時間がかかること、また今般、異例の中間発表となったことは理解できます。
しかし、厳正な調査をすることは該当する研究機関・大学の不可避的な使命であります。その観点からすると、今回の内容は、該当論文の不正箇所における具体的な問題点の言及がなく、研究成果についての学術的な検証や評価もないことから、残念ながら科学界および一般社会に対して十分な説明責任を果たしたものではないと言わざるをえません。日本分子生物学会は、本案件に関しての全面的な科学的評価を含めた、最終報告を一日も早く公表することにより、今後の研究不正対応の模範となる対応をとられることを強く要望します。
日本分子生物学会はこの公式発表を受け、科学界の一員としての責務を果たし、人類の財産である科学研究の公正性を守るべく、改めて研究不正対策に取り組んでいく所存です。

『論文不正の疑いに関する調査(中間報告)の公表について』(東京大学)(2013.12.26)(PDF 87KB

2013年12月27日
第18期理事会執行部


今回、年末という時間的な制約もあり、理事会にお諮りする時間的余裕は無く、1万5千人弱の会員すべての気持ちを代弁できているかはわかりませんが、研究倫理委員会および理事会執行部としては本件を重く受け止め、迅速なHP掲載を行いました。
今後、研究不正対策の具体化に向けて、研究機関や行政へも働きかけていきたいと考えています。

この分生HP記事を受けて、毎日新聞に記事が掲載されました。
日本分子生物学会:加藤元教授論文不正で東大調査委を批判
毎日新聞 2013年12月27日 20時51分
尖ったタイトルになってしまうのは、仕方ないことなのでしょうか……。
中身をこちらにも転載させて頂きます。
 東京大の加藤茂明元教授のグループによる論文不正問題で、日本分子生物学会は27日、論文43本の不正を認めた東大の26日の中間報告について、「十分な説明責任を果たしていない」と批判する見解をホームページで公開した。東大は不正の告発受理から中間報告まで約2年かかったが、この間、学会は大学に情報開示を求める要望を繰り返してきた。

 見解では「今回の内容は具体的な問題点の言及もなく、研究成果についての学術的な検証や評価もない」と指摘。科学的な評価を盛り込んだ最終報告の早期公表を求めている。【八田浩輔】


人は嫌なものは見たくないという心理が働きます。
生命科学系研究者でも多くの方々は論文不正とはまったく関係の無い研究活動を粛々と進めていると思いますので、そのような方々の中には日本分子生物学会の活動が「とんがって」いるように思われるかもしれません。
ただ、私たちの研究活動が「税金→研究費」というお金の流れによっても支えられていることは事実であり、学術団体の在り方自体も半世紀前とは大きく異なってきたことを認知すべきでしょう。
「社会とともにある科学」をどのように進めていくのかは、科学者一人ひとりが意識の中に置いておくべきことと思います。

【関連リンク】
第36回日本分子生物学会理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」開催報告
「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」

各セッションの簡単なまとめが掲載してあります。
追って、種々の提言を含む報告書を発出する予定となっています。

【追記】
朝日新聞からも分子生物学会コメントを取り上げた記事が掲載されていました。
東大論文不正「十分な説明を」 元教授所属の学会が声明(2013年12月27日21時29分)
 東京大分子細胞生物学研究所元教授の研究グループによる論文不正問題で、元教授が所属する日本分子生物学会は27日、東大による調査の中間報告に対し、「十分な説明責任を果たしたものではない」とする声明を出した。「最終報告を一日も早く公表すること」を求めている。

 東大が26日に発表した中間報告は、研究グループの論文計51本について「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」としたものの、関係者の調査が途中であることなどから、捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正行為との認定をしなかった。これに対し、声明は「具体的な問題点の言及や研究成果についての学術的な検証や評価もない」と批判した。


さらに読売にも追記されましたので、web上に残しておくために転載致します。
東大の中間報告「検証や評価もない」学会が批判(2013年12月28日11時22分 読売新聞)
東京大分子細胞生物学研究所の論文不正問題で、日本分子生物学会は27日、東大の中間報告に対し、「十分な説明責任を果たしたものではない」と批判する声明を発表した。

 東大は26日、同研究所の加藤茂明元教授(2012年3月辞職)の研究室が発表した51本の論文で、不適切な画像210か所が見つかり、うち43本は撤回すべきだとする中間報告を公表した。これに対し、同学会は「具体的な問題点の言及や、研究成果についての学術的な検証や評価もない」と、最終報告の早期の公表を求めた。

 同学会は、国内の生命科学系学会で最大規模。加藤元教授は、同学会の元理事で、研究不正に関する若手教育担当メンバーだった。


なお、日本分子生物学会は「国内の生命科学系学会で最大規模」というと語弊があります。
例えば、癌学会さんの会員数は約2万人ですので(ただし臨床医も多数含む)。
by osumi1128 | 2013-12-28 09:50 | 科学 コミュニケーション | Comments(0)

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