小保方さん関連(その4):目利きとしての発生再生総合研究センター

註:以下の記事はまだSTAP細胞論文についての疑義が生じる前に書かれたものであり、後半で女性研究者をロールモデルとして挙げることを目的としていますので、このままブログに掲載しておきます。2014年12月26日付で、STAP細胞は存在しなかったことが報告されています。


小保方さんの理化学研、年俸1億円の研究者も?

というタイトルの報道を見て、いくらなんでも小保方さん「の」理化学研究所と言われちゃうのは、なんだかなと思いましたので(苦笑)、小保方さんが所属されている理化学研究所発生再生総合研究センターについてご紹介します。

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理化学研究所は1917年に当時財団法人として設立された研究所です。
現在は独立行政法人として、2001年にノーベル化学賞を受賞された野依良治先生が理事長をされています。
詳しくはこちらの「理研について」をご参照下さい。

現在では15ほどの研究所(=センター)から成り立っている形であり、「日本で唯一の自然科学系の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めています(上記HPより)。
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英語名称はRIKEN Center for Developmental Biology(略称はCDB)となっていて、「再生」という言葉は入っていませんが、もちろん、再生医療に向けた基礎研究、トランスレーショナルリサーチも行われています(後述)。
ちょうど2000年のミレニアム予算で作られた研究所で、すでに13年経過していますが、その間、センター長である竹市雅俊先生のリーダーシップにより、日本の発生・再生研究のメッカとしての位置は揺るぎないものになりました。

世界の発生関係の研究所の中では新しくできたCDBが短期間に伸びたことには、いくつかの理由があると思います。
まずは、センター長の竹市先生が、細胞接着分子カドヘリンの発見者として、世界的に著名な研究者であったことに加え、センター長としてのマネジメント力にも優れたおられたことが挙げられます。
(すでに慶應医学賞や日本国際賞も受賞されていらっしゃいますが、ぜひノーベル賞も!と個人的には応援しています!)
また、最初の組織づくりにおいて、「兼任を認めない」方針で、グループ・ディレクター(GD)もチーム・リーダー(TL)も採用することにして、キック・オフから誰もがエフォート100%で最高の研究を行ったということもあるでしょう。
GDの中で副センター長を務められてこられた西川伸一先生(下記リンク先も参照)や相澤慎一先生のご功績も多大なものがあるとリスペクトしています。
(また、現在の副センター長の笹井芳樹先生は、今回の小保方さんの論文をブラッシュアップしていくのに、大きな役割を果たされたのではないかと推察します。)
基本的にTLの任期は5年で更新は1回(つまりmax10年まで)、最初のセットアップは欧米並みに支援されますが、内部昇進は原則として無いという方針であったため、初期メンバーはかなり入れ替わり(TLからGDになられた方も一部あり)、切磋琢磨の意識と流動性が担保されていることも良い作用があったと思われます。
そして、立ちあげ時から広報担当者にDouglas Sipp博士という「外国人」を起用し、理研の「顔」をどのようにつくるか、見せるかについて、他の広報メンバーとともに海外に向けて強力に推し進めたということも重要な点であったと思います。
実際シップさんは元Nature編集者であり、さらに国際幹細胞学会におけるpublic relations関係でも活躍されています。

さて、CDBが小保方さんをユニット・リーダー(UL、TLよりも小規模の研究室主催者)に抜擢したのが2,3年前なのだと思いますが、学位取得後間もない若いPrincipal Investigator(PI、研究室主催者の業界用語)を採用したことについては前例があります。
昨年、母校の東京大学大学院医学系研究科の教授で異動された上田泰己さんも(そもそも、大学院生として東大に席を起きつつ、山之内製薬(当時)の研究室を主催していた方ですが)、そのような若いTLでした。
つまり、CDBは年功序列ではなく、若くても才能があればOKという研究所なのです。
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女性研究者の育成に関しても、CDBはなかなかのものだと思います。
初期メンバーとしては高橋淑子さんというTL一人だった時代もありますが(現在は、奈良先端大教授を経て、京都大学教授)、小保方さん関連(その4):目利きとしての発生再生総合研究センター_d0028322_10233156.jpg他にも、2010年から東北大学大学院生命科学研究科に着任された杉本亜砂子さんがCDB時代にも素晴らしい研究成果を挙げられました。





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小保方さん関連(その4):目利きとしての発生再生総合研究センター_d0028322_10343176.jpg現在の女性TLには、花島かりなさんや、iPS細胞を用いた最初の臨床治験に取り組んでおられる高橋政代さんもおられご活躍です。
かりなさんも政代さんもお母さん研究者でもあり、政代先生の方はすでにお嬢さんお二人が大学生となって楽になられたところでしょう。

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小保方さんのようなUL、すなわち、より若手のPIには他にも戎屋美紀さんという方がおられます。








ですので、一つ前のブログにも書いたように、CDBでは男女限らず、光る方々を採用する「目利き」としての能力が執行部のみなさんに高いこと、また採用された研究を育てる土壌があるのだと思います。

発生・再生に特化した研究所としての意義は、大学のような教育のエフォートが限りなく少なく、研究に専念できること、同じ研究分野の研究者が集まることにより、最先端の情報交換や共同研究が盛んになることなどがあるでしょう。
もちろん、その分、高い研究成果を出すことのプレッシャーは大きいと思います。

新しい形の独立行政法人になるというタイミングに、どのような方がセンター長になるのか、興味が持たれます(この際、ぜひJanet RossantやSally Templeなどの大抜擢を期待します♫)。
竹市センター長が築かれた伝統と栄光がさらに輝かしいものになることを心から応援しています!

【拙ブログ小保方さんシリーズはこちら】

【他の解説記事でお薦め】
NPO法人オールアバウトサイエンス:元CDB副センター長の西川伸一先生が立ちあげたNPOのHPより

1月30日:酸浴による体細胞リプログラミング(1月30日Nature誌掲載論文)


Commented by 高橋政代 at 2014-02-02 11:25 x
先生、CDBのご紹介ありがとうございます!
TLの任期は5年で1回だけ再任ありです。ですので、5年で終わる場合もあり、でも最長でも10年です。(うちのラボは臨床研究開始前にプロジェクトとなりましたので、そこから10年です)
Commented by RB94 at 2014-02-02 18:33 x
もと中の人です。
TLの任期は当初5年、再任一回の計10年が基本だったはずです。ただしGDやPL昇任(倉谷TL→GD、丹羽TL→PL)は別扱い。
by osumi1128 | 2014-02-02 10:54 | 科学技術政策 | Comments(2)

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