いまどきの「常識」
2005年 10月 25日
この8月に新刊ですでに第2版になっていた。
ふと手に取った理由は著者が同じ高校の同学年ということなのだが、彼女がメディアに載ってから今まで抱いていた印象と、「まえがき」で述べられていたこととの間にギャップがあって、ちょっと読んでみようと思った。
リカちゃん人形の名前をペンネームにした彼女は、皆さんご存じと思うが、精神科医としても仕事をしている。
漫画やゲームについての見識が深いためか、これまで「柔らかい雑誌」系でもあちこちコメントが載っていた。
それを目にして「何となく違うなあ・・・」と感じていたのは、私が(方向音痴ばかりか)ゲーム音痴だからだ。
かつての「ブロック崩し」から「インベーダー」辺りですでに挫折しており、私にはあのように素早くコントローラーを上下左右に動かす神経回路を構築できないと思って諦めた。
もしかしたらロールプレイ系のゲームなら、時間をかけてもよくて何とかなったのかもしれないのだが、何事も最初で躓くと後が良くない。
囲碁も将棋も、小学校低学年で父と対戦してこてんぱんに負けてからやる気がしない。
さて、印象が違ったというのは、彼女が実は『憲法を変えて戦争へ行こうとう世の中にしないための18人の発言』(共著、岩波ブックレット)などを書いていることを「著者プロフィール」で知ったからだ。
「まえがき」には
「平和」「平等」などときれいごとを言うな。
この厳しい世界の現実が目に入らないのか。
自虐的なことを言って国を売るのがそんなに楽しいか。
日本人を侮辱するつもりなら、さっさとこの国から出て行け。
・・・といった抗議や批判の手紙を読んで自問自答することが書かれている。
そして、本文では「自分の周りはバカばかり」「お金は万能」「男女平等が国を滅ぼす」「痛い目にあうのは自己責任」「テレビで言っていたから正しい」「国を愛さなければ国民にあらず」(以上各章のタイトル)といった「いまどきの常識」に対して、「本当にそうか?」と問いただしている。
国内での失業増加、犯罪増加だけでなく、イラク戦争、北朝鮮問題、中国の台頭など、不安をかき立てることが相次ぎ、なし崩し的に「憲法改正」に向かって、一部ではナショナリズムが高まり、株やITで巨万の富を築く人たちがいて、しかしながら「強者の論理」に付いていけない若者がニートになったり、リストラにあった中高年が自殺したり、いや、こんな文章からこぼれ落ちる様々な問題によって悩める人々と、精神科医香山リカは対峙してきたのだと知った。
同じ高校を卒業した私が過ごした27年間とはえらい違いだ。
「食わず嫌い」していた彼女の著作をもう少し読んでみようと思った。