総合科学技術会議基本政策委員会傍聴

第13回基本政策専門調査会を傍聴した。
これまで「生命倫理」関係など、傍聴される側、すなわち、専門委員として会議に出席していたことはあったが、傍聴席に座ってみたのは初めての経験だった。
一応、科学技術総合会議議員の方々はほぼ全員出席。
議題のメインは「第3期科学技術基本計画の検討について」であった。

この議論はさまざまなレベルで1年以上かけて議論している。
今回はかなり煮詰まった答申素案に対する各省の意見ヒアリングから始まった。

口火を切った財務省の主計官からは、各種資料に基づき、国の財政がいかに逼迫しているか、そして、科学技術に過去数年来これだけの金をつぎ込んだにも関わらず、論文の被引用度などの指標は伸びておらず、さらに国民の科学技術に対する関心は徐々に低下している、という現状を踏まえて、どのように「納税者たる国民に科学技術に対する予算を説明するのか?」という意見が述べられた。

皆さんご存知と思うが、日本はものすごい「ローン」を負っている。
現在歳出総額と税収の差額は約40兆円もあり、これは一般会計税収の「12年分」に相当する。
年度別にみた基礎的財政収支赤字が約16兆円で、これは国の予算から、国債、社会保障、地方交付税交付金等を除いた「公共事業・文教科学振興・防衛」の予算よりやや少ないという程度。
こういう数字を突きつけられると、すみません、私たち科学者は無駄遣いしているかもしれません、と頭を下げたくなる気が一瞬するのだが、いやまて、国債発行はそのためだったか、ミサイルや戦闘機は一機いくらするのか?、ほとんど車が通らない道路や、地方の美術館建設などは何だったか?と思いなおす。

財務省の主計官は「国民の科学技術に対する関心が低下しているのに、何故科学技術政策に予算配分するかという説明をどうするのか?」という、ある意味まっとうなロジックをぶつけてこられた。

専門委員のどなたかが、米国では1995年以降ライフサイエンスの予算がものすごく伸びていることを指摘して、日本はそれほどでもないことを述べられたが、これは冷戦終結で軍事予算がライフサイエンスに流れたからというのが本音であって、まあ、それはそれで米国のライフサイエンスを一層推し進める効果があったと思うが、単順に比較すべきではない。

しかし、私は自分自身の研究人生を振り返って、国民に対する説明責任をこれまであまり果たしてきたとは言えないことを反省している。
論文は確かにこの業界で生き延びるくらいは出してきたと思うが、一般市民が科学論文を理解できるかというとそれは大いに疑問が残る。

これまで私たちの世界ではそれで済んできた。
でもこれからはそうではいけないと思う。
これは必ずしも「役に立つ科学」でなければならないということではない。
「未知の神秘を解き明かす楽しさ」を共有するために、分かりやすい説明とはどういうものかを習得していかなければならないと思う。
サイエンスカフェもその試みの一つであろう。
by osumi1128 | 2005-10-27 02:17

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