プレス発表

いよいよ明日から米国出張なのだが、ぎりぎりまでバタバタと取り込んでいて、本当に大丈夫なのか、ちょっと心配になってきた。
まあ、未開の地に行くわけではないし、航空券とパスポートとクレジットカードがあれば、まあ最低限向こうに行って戻ってくるくらいのことはできるだろう。


実はしばらく前に初めて「プレス発表」なるものをした。
ちょうど科研費申請書作成の真っ最中という時期であったのだが、サイトビジットの折りに「大事な成果はプレスリリースして下さい」と言われて、そういえば、元学生の論文が受理されて、しばらくしたらオンライン公開だと思い出した。
CRESTの事務所に問い合わせると「間に合うかもしれない」と言われて、バタバタと準備をした。

そもそも「プレス発表」なんてことは三大誌CNSなどに論文が出ないとするものではないと思いこんでいたのだが、昨今はそうでもないらしいと知って敷居が低くなった。
JSTの方には「社会に発信する意味がある内容でしたら、是非」と言われ、それは大いにあると思った次第。
プレス発表用の原稿を作るのは、普通の総説やら研究費申請書よりもさらに言葉遣いに注意を払う必要があったが、なんとか期限に間に合った。
問題の論文は10月19日号として公開されるので、それに相当する日本時間、つまり20日の早朝でプレス発表可能という段取り。
その内容はこちら。

今回はまったく時間が無かったので、いわゆる「投げ込み」、つまり、JSTからの発表として報道関係に記事を回しただけ。
ちゃんとしたプレス発表の場合には出向いて説明するのが普通。
それでも日刊工業新聞で取りあげて頂いたらしい。

さて、この話題を持ち出したのは、プレス発表というのは誰のためにしているのか、やってみて初めて理解したからだ。
これまで私は、先ほども書いたように、「素晴らしい研究が素晴らしい雑誌に掲載される」のを、どーだ、という感じでお披露目する、のだと思っていた。
これは大きな間違いだと分かった。
いや、そういうことでも別に構わないのだが、研究者が「自分のため」のご褒美のようにプレス発表するのが本質ではない。
新聞なら新聞を読む読者にとって、新しい発見や成果を知ることによって、何らかのポジティブなこと、つまり、「面白い」でも「役に立つ」でもよいのだが、そういう何かを得るためであり、またメディアはその橋渡しをするために存在しているのだ。

また、もう一つ分かったのは、今ではプレス発表された内容がウェブ上に残るということ。
例えば上記の記事はJSTのプレスリリースとしてHPにアップロードされている。
そうすると、誰かが「大隅典子 Pax6 」というキーワードでインターネット検索をかけると、90件中の4件目くらいにこの記事が引っかかる。
いや、このキーワードは一般の人向けではないが、「不飽和脂肪酸 脳」で検索すると、62,600件中の11件目に挙がってくる。
これは凄いことだと思う。
何か「不飽和脂肪酸と脳」について知りたい人が、最新の情報にアクセスできるのだ。
もちろん、元の論文はオンライン公開されていて、要旨は読めるが、翻訳ソフトを使っても普通の人には何がなんだか分からないような文章しか出てこないだろう。
プレス発表用原稿は一手間も二手間もかけてあって、一般市民が理解できるように書かれている。
インターネットを介したコミュニケーションは知識の地方格差を軽減させるのにも役立つと思う。
by osumi1128 | 2005-11-02 00:13

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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