この週末は体育の日にちなんだ連休でしたが、土曜日(10月11日)に読売新聞社調査研究部主催の
「ノーベルフォーラム:次世代へのメッセージ」にパネリストとして参加しました。
追って、本紙に詳しい報告も掲載されると思いますが、今年のノーベルフォーラムでは、「科学の信頼回復のために」という全体テーマでした。
ノーベル賞受賞者として、
小柴昌俊先生(2002年物理学賞)と
ポール・ナース卿(2001年生理学医学賞)が基調講演をされました。小柴先生は「自分の信じることを、情熱をもって、何度もチャレンジすることが大事」というメッセージを。
ナース博士は、どちらかというと
英国王立協会(Royal Society)会長としての立場での御講演で、あまりご自分の研究の話をされなかったのですが、「Trust in Science」というタイトルで、近代科学の歴史や王立協会のモットー「Nullius in verba(言葉によらず)」を紹介しつつ、遺伝子組み換え作物、狂牛病、地球温暖化等にまつわる科学と社会の関係について触れて、「科学は客観的事実の積み重ねが大事。ただし、その解釈などでは間違うこともある。科学が<疑う>ことに立脚しているということを、科学者も市民もよく認識することが大切」というお話をされました。

その後、休憩を挟んで、読売新聞社の芝田裕一氏のコーディネートにより、ポール・ナース先生、大阪大学准教授の
中村征樹氏とともにパネル討論を行いました(中村さんは、先日の科学と法律に関するシンポジウムでもご一緒でした)。研究不正の背景やその防止のために何をすべきかについて話をしました。
打合せを兼ねた昼食時にもポール・ナース先生といろいろお話をしましたが、Royal Societyの立ち位置について伺ったのが興味深かったです。
「政治家がどのような施策を取るのであれ、必ずロイヤル・ソサエティーには諮問されます。もし、科学的に誤った政策を掲げて、それを実行しようとすれば、ロイヤル・ソサエティーはそれに対して異議を唱えるからです。ロイヤル・ソサエティーは政府とは独立しており、中立な立場で科学的な意見を述べることになっています。ときには意見を取りまとめるのには1年くらいかかることもあります。もっと急ぐ場合には数カ月の場合もありますが。また、私自身が個人的に発言する場合もありますが、まったくの<個人>ではありえないので、そういう場合も、周囲の信頼できる仲間の意見も訊いた上で話すようにしています。」
さすが、1660年に設立された王立協会ならではの歴史と成熟度を感じる言葉でした。ロイヤル・ソサエイティーのフェローが何人いるのか聞き損ねましたが、上記のような諮問に対応する「科学審議会 Science Council」と呼ばれる執行部メンバーは20名ほどとのこと。「分野は満遍なく選ばれているのでしょうか?」と伺うと「うーん、必ずしもそうではないね」とのことでした。会議は20名以上いても、実りある議論にはならない、ということを聞いたことがありますので、ある程度、種々の専門性をカバーしつつ、ロイヤル・ソサエティーとしてのcoherent voiceを出すためには、20名程度の執行部で対応するというのが現実的なのかもしれません。その他のフェローの方々は、それぞれの立ち位置でロール・モデルとして活躍されることを期待されているようです。例えば以下のように、
英国放送協会(BBC)でのインタービューがwebに載っています(ちなみに、ロイヤル・ソサエティーの建物はBBCにも近いですね)。
追って、読売新聞には報告記事が掲載される予定です。
【参考】